令和7年度(2025年度)施政方針

ウェブ番号1024604  更新日 2025年2月19日

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令和7年2月19日

宇部市長 篠﨑 圭二

本日は、令和7年度当初予算並びにその他の諸案件につきまして

御審議をお願いするため、御参集を賜り厚く御礼を申し上げます。

令和7年3月市議会定例会の開会に当たりまして、

令和7年度の市政運営に関する基本的な考え方と

当初予算の概要について御説明申し上げ、

市議会並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 

はじめに

私は、令和6年11月22日より

2期目となる市長職を担わせていただくこととなりました。

多くの市民や関係者の皆様から激励のお言葉をいただき、

寄せられた期待と願いをしっかりと受け止め、思いに応える、

その重責に身が引き締まる思いです。

ふるさと宇部をさらに成長させたいという強い志を胸に、

これからの市政運営に邁進してまいります。

 

令和2年の市長就任以来、私は、

郷土の先人たちのマインドである「共存同栄・協同一致」の精神(こころ)を

しっかりと引き継ぎ、多くの関係者の皆様との共創により、

宇部市をさらに発展させ、次の時代へ誇りを持ってつなげていくという覚悟のもと、

市政の舵取りを担ってきました。

市制施行100周年という大きな節目を契機として「未来への投資」を念頭に、

未来につながる成長産業の創出・育成、中心市街地の活性化、

未来を担う子どもたちへの支援、そして地域資源を活かしたまちの魅力発信など、

「次の100年に向けてのまちの基盤づくり」に取り組んできたところです。

 

その結果、成長産業の分野において、

大きな市場価値を生み出す可能性を持つプロジェクトが立ち上がったほか、

子育て支援制度は県内トップレベルまで充実したものとなり、

令和5年における本市の合計特殊出生率は、山口県の平均を上回る状況にあります。

また、居心地がよく歩きたくなるまちなかウォーカブルを進めている

中心市街地の地価が、20年以上ぶりに上昇に転じるなど、

少しずつ取組の成果が表れてきています。

さらに、まちじゅうエヴァンゲリオンやアーバンスポーツイベントは

市内外から多くの人が訪れ、高い経済効果を生み出し、

本市の新たなコンテンツへと着実に成長しています。

新型コロナウイルス感染症対策に最優先に取り組みながらも、

このようにコロナ禍の先にある宇部市の未来を切り拓くため、

市民の皆様とともに走り続け、

市政を大きく前進させることができました。

この4年間の取組の芽吹きにより、未来への本市のさらなる発展の可能性、

ポテンシャルの高さを確信できたところであります。

 

本市をとりまく諸情勢と課題に対する認識

一方で、本市をとりまく諸情勢は一段と厳しく、不確実性が高まっています。

ロシアのウクライナ侵攻や中東地域での紛争は、

世界のエネルギー市場や食糧市場に甚大な影響を与え、

長引く物価高騰は市民の生活に多大な負担を強いています。 

雇用情勢の改善や個人消費の持ち直しにより、

県内景気は緩やかに回復しているとの見方が示されていますが、

原材料費や人件費の上昇、

人材の確保や急速に進むデジタル化への対応など、

中小企業をはじめとした多くの事業所が厳しい経営課題に直面しています。

市においても、公共施設やインフラがいずれも更新時期を迎えつつある中、

この物価高騰や人件費の上昇が大きな課題として重くのしかかっています。

 

また、能登半島の大地震さらにその半年後に起きた集中豪雨の惨状は、

自然の脅威とともに改めて防災・減災のあり方を考えさせられるものでした。

頻発する集中豪雨や猛暑日など温暖化による異常気象に加え、

気象庁から初めて南海トラフ地震臨時情報が発表されるなど、

大規模な災害が発生する危険性は年々高まりを見せており、

平時からの備えの重要性が増しています。

 

さらに闇バイトとして集められた匿名・流動型犯罪グループ、

いわゆるトクリュウによる強盗事件が日本各地で起こり、

本市においてもSNS等を介した詐欺事件が後を絶たず、

防犯対策の強化への取組など、安心安全なまちづくりが

ますます求められているところです。

 

また、令和7年は、日本が高齢化の新たなステージに入ると言われています。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、その割合はおよそ5人に1人、

さらには、3人に1人が65歳以上となる見通しであり、

医療・介護需要が今後急増すると見込まれています。

その一方で、社会保障制度や経済を支える生産年齢人口は減少し、

今後、社会へ大きな影響を与えると考えられています。

すでに事業所や学校、病院、地域においては担い手不足が顕在化し、

市民生活への影響も出始めています。

 

令和5年に公表された国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、

本市の人口は50年後には8万4千人と、現在の約半数になると見込まれています。

特に本市においては、出生数に関わる20代から30代の若年女性が

都市圏域へ転出していく傾向が続いており、

この流れを変えていく施策が今後重要となってきます。

人が減り続けるこれからの社会にどう対応していくか、

まちを持続させていくためにどんな対策をとるべきか。

少子高齢化、人口減少への対応は、

本市の最重要課題として、引き続き全力で取り組んでいかなければなりません。

 

市政運営の方向性

私は、令和6年度の施政方針演説の中で、

先行き不透明な時代にこそ、未来に向けた明確なビジョンを描き、それを実行し、

まちが変わっていくことを実感していただくことが重要と述べました。

目指す将来像に向けて、未来への投資を続けてきた結果、

今ようやく新しいまちのカタチが見えてきたところです。

持続可能なまちの前提として、全ての市民の皆様に安心と安全をお届けし、

その上で、芽吹き始めたこの新たな可能性をしっかりと確実に伸ばして幹とし、

次の100年に向けて大黒柱としていく、

これが私に課せられた2期目のミッションであります。

こうした認識のもと、市長2期目となる今後4年間は、

5つの分野で未来志向の視点を取り入れた効果的な施策の拡充に取り組み、

これを「未来プロジェクト」として重点的に進めていくことで、

第五次宇部市総合計画のさらなる推進につなげていきます。

 

まず、一つ目は「市民の安心安全な暮らしを守る」プロジェクトです。

自然災害はもとより、健康や暮らし、治安など、

様々なリスクへの不安が高まっている中、

あらゆる面で危機に対応できるまちを創り上げ、市民の命と財産を守ります。

そこで、集中豪雨など多発する自然災害から市民の皆様や地域を守る

防災・減災力を強化するとともに、

犯罪防止に向けた環境整備や医療・介護体制の再構築を進めていきます。

さらには、女性の暮らしやすさや若者の活躍の場づくり、

共生社会の実現に向けた取組など、誰もが笑顔で暮らせるまちづくりを進めます。

 

二つ目は、「未来に向けた戦略的産業振興」プロジェクトです。

まちの活力の源は産業です。

大学や研究機関が集積する本市の強みを活かして、

成長産業のさらなる創出に向け、

新たな成長ドライバーとなるスタートアップ企業の挑戦を

全力で後押ししていきます。

また、中小企業の人材確保やDXといった支援施策を充実するとともに、

稼げる農林水産業への転換やカーボンニュートラルに向けた取組を進めます。

 

三つ目は、「未来を担う人財育成」プロジェクトです。

子どもたちはこのまちの未来の主人公です。

全ての子どもが自分らしく健やかに成長できるよう、

社会全体で支える「こどもまんなか社会」の実現を図るとともに、

不透明な時代を生き抜く力を身につけ大きく羽ばたけるよう、

子ども支援、子育て支援の拡充や教育環境の充実をさらに進めます。

 

四つ目は、「宇部の新たな可能性を創る」プロジェクトです。

我がまちには、

ギネス世界記録に公式認定された野外彫刻展(UBEビエンナーレ)をはじめ、

世界中にファンがいるエヴァンゲリオンなど、

世界に誇れる魅力あふれるコンテンツがあります。

加えて、宇部産の食材や地域資源、歴史的施設など、

本市ならではの素材にさらに磨きをかけ、宇部の魅力を高めながら、

交流拡大につなげていきます。

 

五つ目は、「持続可能な行財政運営」プロジェクトです。

不断の行財政改革の実施と内部統制を強く推し進めるとともに、

DXを推進し、市民サービスの向上とあわせて業務の効率化に努めることで、

持続可能かつ市民の皆様から信頼される市役所としていきます。

 

以上、五つの未来プロジェクトを、

市民・関係者の皆様との共創により推進するとともに、

持続可能な未来に向けて、守るべきものを守る、

そのために変えていくところは変えていく、

変革を決していとわない「未来志向型の挑戦」を進めていくことにより、

第五次宇部市総合計画に掲げた将来都市像

「ひとが輝き 交流ひろがる わたしたちの宇部(まち)」の実現を図っていきます。

 

令和7年度当初予算案の概要

こうした思いで編成した令和7年度当初予算は、

社会保障の充実に伴う扶助費の増加や、物価高騰への影響に適切に対応し、

あわせて、次代へ課題を先送りすることなく、

第五次宇部市総合計画を着実に進めるため、

EBPMの手法を用いながら、

未来プロジェクトを中心に、必要性、効果性の高い事業の構築を図りました。

その結果、一般会計の予算規模は、

過去最大となる764億5000万円となっています。

なお、財政運営の持続性にも留意し、令和7年度末の市債残高は、約656億円、

令和6年度と比較して約4億1000万円の減少、

また、令和7年度末の財政調整基金残高については、

中期財政見通しを上回る約36億7000万円を確保したところです。

 

それでは、令和7年度当初予算の主な内容について御説明いたします。

まず、令和6年11月に閣議決定された

「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に係る

国の補正予算を活用し、

物価高騰に苦しむ市民や事業者の皆様への支援を引き続き行っていきます。

主なものとして、まず、

学校給食の食材費の高騰による質・量の低下と保護者負担の増加を防ぐため、

公立小中学校における給食費の食材費上昇分の公費負担を拡充します。

次に、物価高騰の影響を受けている「こども食堂」の

安定的な運営を支援するため、経費の一部を助成するほか、

市内24地区のコミュニティ団体等の継続的な運営を支援するため、

地域創生事業費助成金を増額交付します。

また、地域の脱炭素移行の加速化とエネルギー価格の高騰を踏まえ、

省エネ対策として行う住宅リフォーム工事や、

市内中小企業等の省エネ設備の導入を支援します。

 

続いて、「未来プロジェクト」に沿って、

主な取組内容を御説明いたします。

 

1 市民の安心安全な暮らしを守る

一つ目は、「市民の安心安全な暮らしを守る」プロジェクトです。

まず、頻発化・激甚化する自然災害等から市民の皆様の安心と安全を守るため、

防災・減災に向けた整備や災害への備えを強化していきます。

具体的には、集中豪雨などの災害時に起こる

道路の冠水や内水氾濫、土砂崩れ等の情報を、

統合型地理情報システムを活用して一元管理し、各部門で共有するとともに、

必要な情報は市民等も確認できるよう市ウェブサイト上で公開します。

あわせて、過去に浸水被害が出た箇所や氾濫危険箇所へ

河川監視カメラと水位計を設置し、監視体制の強化を図るとともに、

河川状況をリアルタイムに発信していきます。

また、JアラートとコミュニティFMとの連携を図ることにより、

緊急性の高い情報をラジオで自動配信できるようにします。

さらに、地域の浸水被害を防ぐために重要な役割を果たしている

市内各所の水門・樋門の開閉を、人力を介さずに遠隔で操作できる

システムの導入を進めていきます。

また、大規模災害の発生により

長期化する避難所生活を想定した備蓄計画を作成し、

避難者の健康やプライバシーに配慮した避難所運営ができるよう、

非常食の確保、簡易ベッドやパーティション等の資機材の充実を図っていきます。

加えて、子どもたちの学習・生活の場であるとともに、

地域の避難場所である学校体育館の防災機能を強化するため、

新たに空調設備の設置に向けた調査・検討に着手します。

また、木造住宅の耐震診断、耐震改修等に対する補助制度を拡充します。

さらに、災害に強いまちづくりに向けたハード整備として、

宇部西消防署の建替え工事や、宇部中央消防署東部出張所の建替えに向けた

基本設計等を進めていくほか、

現在、厚南エリアで整備を進めている防災公園に遊具等を設置します。

 

次に、市内の医療環境に目を向けますと、

医師や看護師といった医療従事者の高齢化や人材不足、

救急搬送件数の大幅な増加などにより、

二次救急輪番体制の維持が困難になっています。

このため、地域医療構想のモデル推進区域として、

国や県、関係機関と連携しながら救急搬送医療機関の集約化・機能分化を検討し、

救急医療体制の再構築を進めていきます。

あわせて、消防局が導入する救急医療情報システムの利用状況を分析し、

各医療機関の機能分化の検討も進めていきます。

また、救急勤務医について処遇改善を行う医療機関に対しては、

県と連携して一部助成を新たに実施します。

さらに、休日・夜間救急診療所については、混雑緩和など

円滑な診療体制の構築に向けて、DXを含めたあり方の検討を開始します。

 

次に、本市は県内で最も人口当たりの刑法犯認知件数が多く、

特に自転車等の窃盗犯罪が増加しているというデータが出ています。

この状況に加え、トクリュウによる犯罪への不安も高まる中、

市民の皆様が安心して日常生活を送れるよう、

引き続き防犯灯及び防犯カメラの設置助成を行うとともに、

警察と連携して、効果的な場所に防犯カメラを設置していくなど、

犯罪防止に向けた環境整備を積極的に進めていきます。

 

また、人口減少が進む中においても、

一人ひとりが心豊かに暮らせる社会であるためには、

老若男女、障害のある方もない方も、全ての人が

多様なライフスタイルや幸せのあり方を認め合い、

それぞれの個性や能力を活かしていくことがますます重要となります。

市民宣言「人間が尊重される都市(とし)づくり」のもと、

全ての人の人権が尊重される社会を実現することを目指して

県内で初めてとなる「(仮称)人権尊重のまちづくり条例」の制定を

令和7年度中に予定しており、

人権意識のさらなる高揚を図るため、人権教育・啓発活動を進めていきます。

 

さらに、人口減少の流れを変え、持続可能な発展を実現するためには、

若者や女性に、宇部で暮らしたい、宇部に住み続けたいと

選ばれるまちとなる必要があります。

そこで、女性の暮らしやすさについて調査研究を行う

ワーキンググループを立ち上げ、効果的な取組を進めていきます。

また、働く女性の増加や労働力人口減少社会の到来を踏まえ、

女性の健康を社会的課題として捉える必要があることから、

ライフステージに応じた女性特有の健康課題についての

相談支援体制を拡充するとともに、

健康経営の観点から、事業所における就業継続に向けた理解促進など、

女性活躍の基盤となる健康づくり、支援体制づくりを多角的に後押しします。

 

一方、生活機能や運動機能が低下し、

自信をなくしたり日常生活に不安を感じた高齢者が、

再び元の生活を取り戻せるよう

介護予防プログラムと個人面談を取り入れた短期集中予防サービスを

実証から実装に本格移行します。

さらに、高齢者の生きがいづくりや健康の維持増進につながるよう、

令和6年度に開始した「シニアおでかけ応援事業」の検証を踏まえて、

高齢者のニーズに合わせた就労や居場所づくりをマッチングする仕組みを

新たに構築するなど、取組を深化させます。

また、高齢化の進展に伴い、

今後ますます要介護者が増加していくものと考えられます。

そこで、高齢者を介護する御家族の精神的・身体的負担を軽減するため、

看護職等や事業者と連携して、負担の少ない介護方法のアドバイスや

家事等の生活支援などのサポート事業を構築します。

 

障害福祉の充実としては、

将来的な「発達障害総合支援センター(仮称)」の設置を見据え、

発達障害児やその御家族に対し、

福祉・医療・教育などの関係者が連携して、

一人ひとりの子どもの状況に応じて切れ目のない支援が可能となるよう

支援体制の強化を図っていきます。

また、障害がある人など誰もが安心して外出できるように

うべマップに掲載したバリアフリー情報の周知に努めるとともに、

いただいた御意見を参考にしながら、さらなるブラッシュアップを図ります。

 

次に、暮らしを支える地域公共交通については、

新たに、小野地区の移動手段を持たない高校生などを対象とした

公共ライドシェアの実証実験を、地域と協働で行います。

さらに将来的なバス利用者の増加、

また、小中学校の適正配置や部活動の地域移行等を踏まえた

子どもたちの移動手段の確保を目的に、

小中学生のバス運賃を全て無料とします。

これにより、通学や部活動、塾の行き帰りなど、

広くバスの利用を促進するとともに、

子育て負担の軽減を図ります。

 

また、JA厚南前交差点西側の市道西宇部妻崎線に

右折レーンの整備を進めるなど、

引き続き、県と連携しながら厚南地区の慢性的な渋滞の解消に

積極的に取り組んでいきます。

 

2 未来に向けた戦略的産業振興

二つ目は、「未来に向けた戦略的産業振興」プロジェクトです。

本市の持続的な発展を目指し、

未来を担う若者(ひと)に、住みたい「まち」として本市を選んでもらうには、

魅力ある「しごと」の創出が重要となります。

そこで、本市の産業に携わる様々な関係者との共創のもと、

「宇部市産業振興計画」や「宇部市農林水産業振興計画」に基づき、

強い産業への転換や魅力的な雇用の場の創出に引き続き取り組んでいきます。

 

まず、医療や宇宙、バイオ関連など成長産業の創出に向けて、

産業集積の核となりうる先端的な研究開発拠点の形成を目指す取組に対して、

山口大学と連携して支援を行うとともに、

研究開発の成果を活かして実用化・産業化を目指す大規模なプロジェクトへの

支援を拡充することで、関連企業の集積や市内企業の参入促進を図ります。

また、成長産業分野の事業を展開する企業の

起業初期から事業拡大期における資金需要に応えるため、

地域金融機関等からの出資と連携する新たな補助制度を創設し、

円滑な資金調達をサポートします。

さらに、「うべスタートアップ」については、事業内容を再構成し、

若者や大学等の研究者、市内企業等の多様な主体が参画する

起業コミュニティを形成するとともに、

若者の起業など新たなチャレンジを応援する補助制度を創設します。

こうして、起業機運の醸成や若者のビジネススキルの向上、

参加者同士のつながりを創出することで、

地域で活躍するイノベーション人材の育成や

市内企業等によるオープンイノベーションの促進につなげていきます。

 

次に、新たな雇用の創出に向け、

事業所設置奨励制度等により、市内の産業団地への企業誘致を図るとともに、

「地域経済牽引事業」に取り組む事業者の先進的分野の事業拡大を支援します。

また、市内の産業団地の残り区画数が少なくなっていることから、

県が整備を検討している新たな産業団地の誘致に向けて、

令和6年度に実施した適地選定調査の結果をもとに、

積極的に働きかけを行っていきます。

 

次に、市内中小企業等の競争力を強化するため、

やまぐち産業振興財団と連携し、新たな顧客ニーズとのマッチングや商品開発、

販路開拓等の支援に取り組みます。

また、市内中小企業等の人材確保に向けては、宇部商工会議所と連携して

企業ニーズに合わせたきめ細かい支援を行うとともに、

学生等へ企業の魅力を積極的に発信していきます。

さらに、令和7年度から奨学金返還支援制度を開始します。

未来を担う若者の経済的不安を解消し、

市内中小企業をはじめ、福祉・医療、一次産業といった分野の人材確保や

本市への移住定住につなげていきます。

 

また、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、

宇部・山陽小野田地域のコンビナート企業や市内中小企業等の脱炭素化の取組を

国・県等と連携して支援していきます。

 

次に、持続可能な稼げる農林水産業への転換を目指して、

生産性・収益性の高い農産物の作付け拡大を支援するとともに、

農作業の負担軽減や担い手不足の解消、作業効率・生産性の向上を図るため、

先端技術を活用したスマート農業に取り組む農業者を

引き続き支援していきます。

また、生産性・収益性の高い漁業への転換を促進するため、

令和6年度に実証を行った、環境の変化に適応した栽培漁業について

新たに補助制度を創設し、さらなる取組を支援します。

このほか、飲食店等と連携したフェア開催や魅力発信によって

うべ産水産物の認知度向上を図り、より一層の消費拡大につなげていきます。

さらに、本市の食の地域資源を活用した商品開発を支援し、

県や関係機関と連携して、市内外や首都圏等への販路拡大を図るとともに、

イベント等を通じて、本市の食の魅力を積極的に発信していきます。

 

また、本市の豊富な竹資源を積極的に活用していくため、

竹資源利活用の総合施設「竹LABO」を拠点に、県や近隣市、

研究機関等と連携を図り、商品化やビジネス化に対する支援を行います。

加えて、バンブーフェスタとあわせて開催予定の

全国竹の大会を支援します。

 

3 未来を担う人財育成

三つめは、「未来を担う人財育成」プロジェクトです。

子どもたちが自分の夢や希望の実現に向けてチャレンジできる力を育むため、

一人ひとりの個性や能力に応じたきめ細かな教育を推進していくとともに、

多様な体験機会を創出していきます。

教育現場においては、

児童生徒をはじめ学校に関わる全ての方にとって

「ウェルビーイングな学校」となるよう、

令和7年度から

「教育課程改革」「授業改革」「生徒指導改革」「学年・学級組織改革」の

四つを柱とする「学校教育改革プロジェクト」に基づき、

児童生徒の学力向上や自己有用感を高める取組の充実を図っていきます。

具体的な取組としては、

1人1台端末の環境を活かし、AIによるアシストを受けながら、

児童生徒が自分の学びの到達度に応じた学習に取り組むことができる

デジタルドリルを新たに導入し、学びの定着を図ります。

また、外国語指導助手(ALT)を派遣するとともに、

生徒一人ひとりが個別に実践・演習できるAIを活用した英会話を新たに導入し、

児童生徒の実践的な英語力の向上を図ります。

 

一方で、本物に触れる多様な体験機会の充実も図っていくため、

中学生を対象とした職業体験イベントを、地元企業の協力のもと引き続き開催し、

働くことの意義や地元就職への意識の醸成を図ります。

さらに、JAXA等と連携し、

中学生を対象としたキャリア教育講演会を新たに開催するほか、

モバイルプラネタリウムやデジタル天体望遠鏡等を活用した宇宙教育に取り組み、

子どもたちの宇宙や科学技術に対する興味・関心を高めていきます。

また、本市がニューカッスル市と姉妹都市提携を結んでから

45周年となることを記念して、

同市からの訪問団の歓迎行事を実施するとともに、

ニューカッスル市への中学生の研修派遣や高校生の短期留学支援により、

語学力の向上や多文化への理解を促進することで、

未来を担う子どもたちの可能性を広げていきます。

また、里山ビオトープ二俣瀬の整備を進め、

そのフィールドを活用した小中学生の環境教育に取り組み、

持続可能な地域づくりに主体的に参画できる人材育成を進めていきます。

 

次に、全ての子どもたちの学びの機会を保障するため、

子どもたち一人ひとりの個性や状況に応じた支援の充実を図ります。

まず、特別な支援を必要とする子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、

教育支援員を増員し、一人ひとりの特性や状況に応じた支援を行っていきます。

また、令和5年度の不登校児童生徒数が過去最多となり、

特に小学校における増加が顕著であることから、早期支援を図るため、

小学校の「校内ふれあい教室」を増設します。

さらに、不登校の未然防止を図るため、

市長部局と教育委員会が連携し、就学前の段階から、

家庭に対して、例えば、課題となっているスマートフォンの適切な利用等、

子どもたちの生活習慣を整えるための情報提供や相談体制の充実に取り組みます。

 

このほか、社会の変化に対応した教育環境の整備にも取り組みます。

人口減少時代において、

将来にわたって、子どもたちに最適な教育環境を提供していくため、

「宇部市立小中学校適正規模・適正配置計画」に基づく取組を

引き続き進めていきます。

また、少子化が進む中、

生徒がスポーツや文化芸術などの部活動に継続して取り組んでいけるよう、

地域クラブへの移行に向けた実証事業の実施や

地域クラブ活動を行う団体への支援により、

学校部活動の地域展開を段階的に進めていきます。

さらに、「学校教育改革プロジェクト」の取組の一つとして、

新たに「チーム担任制」の導入を進めていくことで、

教員の業務負担の軽減・平準化を図り、

教員が子どもと向き合う時間を確保していきます。

 

次に、全ての子どもが自分らしく健やかに幸せに成長できるよう

社会全体で支えていく「こどもまんなか社会」の実現に向けて、

令和7年3月に策定する「宇部市こども計画」に基づき、

様々な取組を積極的に進めていきます。

まず、子ども・若者の居場所であり、相談拠点となる「若者ふりースペース」の

「こどもコーディネーター」を増員し、

アウトリーチ型の支援を強化します。

また、市長部局と教育委員会で支援の状況を共有することで、

重層的な支援体制を強化し、

困難な状況におかれた子ども・若者の早期発見、早期支援につなげていきます。

また、妊娠期から出産、子育て期までの

切れ目のない相談・支援のさらなる充実に向けて、

多世代ふれあいセンターで実施している

乳幼児一時預かり事業の開設日を拡大することで

保護者の育児負担の軽減を図るとともに、

新たに5歳児健康診査を

小児科医療機関等との連携により実施することで、

治療や特別な支援が必要な子どもの早期発見につなげます。

さらに、家事・育児に不安を抱える家庭に

専門的な知見を有する訪問支援員を派遣し、

子育て相談や、家事育児の支援による生活改善に取り組むなど、

うべこども家庭センターUbeハピが核となり、

県や民間支援団体等とも連携しながら、

子育て世帯へ適切な支援を届けていきます。

 

現在、子育て世帯の経済的支援としては、

高校生年代までのこどもの医療費の無償化や

第2子以降保育料無償化を実施していますが、

さらにこれを拡充し、

幼稚園等を利用する第2子以降の満3歳児の預かり保育料の無償化に

取り組みます。

また、保育所待機児童の解消を図るため、

幼稚園における一時預かりを促進する支援を行うとともに、

今後の児童数の推移等を踏まえ、

新たに恩田地区において学童保育専用施設の整備に着手するなど、

安心安全な保育環境の充実を図ります。

そのほか、「こどもまんなか社会」を実現していくために

子ども・若者が自由に自らの意見を表す機会を確保し、

本市のまちづくりに反映していく仕組みを創ります。

 

4 宇部の新たな可能性を創る

四つ目は、「宇部の新たな可能性を創る」プロジェクトです。

新しいまちのカタチとして、常盤通り(国道190号)では

居心地がよく歩きたくなるウォーカブルなまちづくりに、

令和4年から国と連携のうえ本格着手し、

この3月には市役所前の整備が完了、

8月にはいよいよ市民交流棟がオープンします。

令和7年度は、引き続きヒストリア宇部前の整備を進めていくほか、

まちづくり会社「にぎわい宇部」等との連携により、

定期的にイベントの開催を図るなど、

ウォーカブルなまちづくりをさらに推進していきます。

また、旧山口井筒屋宇部店の解体が完了し、

子育て支援拠点とくつろぎ・交流機能を核とする複合施設

「ときわスクエア」の整備も本格的に進めていきます。

 

この4月には、本市のスポーツの拠点として、

恩田スポーツパークがリニューアルオープンします。

オープニングでは、新たに整備された、にぎわい交流施設、

屋根付きグラウンド、都市型スポーツ広場を中心に、園内全ての施設を活用し、

幅広い年代の方に

生まれ変わった恩田スポーツパークを体験していただける

イベントなどを実施します。

また、引き続き、

UBE URBAN SPORTS FESや3x3大会等を開催し、

国内トップクラスのパフォーマンスを間近で感じ、体験する機会を創出することで、

アーバンスポーツを楽しめるまちの定着を図るとともに、

プロスポーツチームとの連携を通じて、

「する」「みる」「ささえる」スポーツの振興に取り組んでいきます。

 

次に、本市ならではの観光コンテンツとして認知度を高めている

「まちじゅうエヴァンゲリオン」については、

まちじゅうエヴァグルメに加え、

『エヴァンゲリオン』トリビュート彫刻デザイン案コンテスト最優秀作品の

実物制作を行うなど、

『エヴァンゲリオン』シリーズ30周年企画とも連携を図りながら、

さらなる誘客促進と地域経済の活性化を図ります。

 

また、UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)については、

令和5年度に実施した市民ワークショップでの御意見や

これまで関わってこられた市民、団体、及び有識者の御提言等も参考に、

持続可能な彫刻展を目指して、3年に1度の開催に変更し、

令和9年度の本展に向け新たなスタートを切ります。

 

ときわ公園は、1925年の開園以来、

多くの市民に愛され100周年を迎えます。

この5月には、記念セレモニーやイベントを開催し、

市民の皆様と一緒にお祝いします。

また、多様化するニーズに合わせた持続可能な公園の管理・運営と、

新たな魅力づくりを推進するため、民間活力の導入を検討していきます。

 

そして、まちの新たな可能性を創出していくためには、

次代を担うひとづくりが重要となります。

高等教育機関等が集まり、多くの学生が暮らす本市において、

その若い感性やアイデア、行動力は大きな強みであるため、

学生との対話の場を設け、本市の課題や可能性を掘り起こし、

その解決や活性化に向けて地域団体や企業等と一緒に取り組む、

「日本一学生が活躍するまちづくり」を推進していきます。

学生が成長し、まちが成長する、

そして、若者に選ばれるまちを目指します。

また、地域活動への参加などに対し、

ポイント数に応じてデジタルギフトを進呈する「うべポイント」事業を活用し、

地域における様々な活動の輪を広げることで、

地域活動の推進と地域の人材確保につなげていきます。

 

北部地域の振興においては、

「北部オープンプラットフォームラボ」を拠点に、

北部6地区間の交流の促進と連携の強化を図るとともに、

北部地域の魅力を発信する『うべKITAまつり』を

地域との共創により企画・実施します。

また、北部地域のお試し住宅を増設し、利用促進を図ることで、

北部地域の魅力を体験してもらい、

交流人口・関係人口の増加につなげていきます。

 

このほか、市西部地域には文化施設等が無く、

これまで、施設設置を望むお声を多くいただいてきました。

こうしたお声も踏まえ、市民交流の拠点として、本を通じ、

多様な世代・価値観を持つ人が出会い、学び、楽しむ「まちライブラリー」を、

ゆめタウン宇部店舗内に設置します。

 

5 持続可能な行財政運営

最後の五つ目は、「持続可能な行財政運営」プロジェクトです。

限られた行政資源で最大の政策効果を発揮するため、

事業の必要性や効果等について、

エビデンスに基づく自律的な点検・見直しを行うとともに、

持続可能な財政構造の確立に向けて、歳入・歳出両面から行財政改革を進めます。

特に、令和7年度は、近年の社会環境の変化や経済情勢等を踏まえ、

適正な受益者負担となるよう

使用料・手数料の見直しについて検討を進めます。

また、高齢化の進展や

物価高騰等による生活困窮者の増加といった

社会情勢の変化を背景として増加し続ける

医療・介護・障害・生活保護の給付については、

適正なサービス量及び水準確保の観点から、制度や要件の見直しに取り組み、

必要な方が必要な時にサービスを受けることができる

持続可能な制度運営に努めていきます。

 

次に、行政DXの推進として、

国のモデルプロジェクトの採択を受けたフロントヤード改革に取り組み、

書かないワンストップ窓口の再構築や、オンライン申請の拡充、

また、リモート窓口の設置など、

DXによる市民との接点の多様化・充実化を図り、

市民の皆様の利便性を高めていきます。

さらに、AIを活用し、

来庁者の申請データや受付ログといった様々なデータを分析・検証することで、

エビデンスに基づく継続的な業務改善と市民サービスの向上を図ります。

 

また、老朽化が進んだことにより、この3月に総合福祉会館が閉館しますが、

その他多くの公共施設が更新時期を迎えており、

それらの役割や機能等を次代に引き継ぐ方策を含め、

広い視点でまちづくりを進めていかなければなりません。

中でも、開館から50年以上経過している石炭記念館については、

本市発展の礎となった石炭産業の歩みを長く後世に伝える

本市にとって恒久的な価値ある資料を保存しており、

デジタルを活用した手法や他の施設への機能移転も含めて

今後の在り方を多角的に検討していきます。

また、複数の公共施設の設備保守点検や清掃業務などを

専門の民間事業者が一括管理する公共施設の包括管理を新たに開始することで、

施設の管理品質の向上と事務の効率化を図ります。

 

職員の働き方改革としては、開庁時間の短縮を実施することで、

窓口職場の恒常的な時間外勤務の解消を図り、

生産性の向上と事務の効率化を目指すとともに、

行政ニーズに見合った職員体制についても検討していきます。

さらに、行政事務の適正な執行と市民サービスの向上のため、

令和7年度も引き続き内部統制の強化に取り組みます。

 

公営企業

水道事業については、

人口減少に伴い水道料金の減収が続いており、

経営環境は厳しさを増しています。

今後も水道水の安全・安心・安定供給を維持していくため、

老朽施設の更新と耐震化を計画的に進めるとともに、

経営の効率化と経営基盤の強化を図っていきます。

 

次に、交通事業について、

市が公営バス事業を運営していることは、

まちづくりにおいて大きなアドバンテージであり、

将来にわたって安定的で持続可能な事業運営を行っていく必要があります。

このため、安心・安全な運行を徹底するとともに、労働環境の改善などによる

運転士の確実な充足や平均年齢の引き下げにも取り組みます。

また、ひとりでも多くの方に路線バスを利用してもらうため、

引き続きICカードの普及促進に取り組みながら、

新たに特定時期における金曜日の最終便の繰り下げ運行や

高齢者を対象とした「乗り方教室」の継続実施など、

公共交通の利便性向上と利用促進を図っていきます。

 

むすびに

さて、令和7年度は、昭和100年という節目の年となります。

我が国では、戦後の復興から、その後の経済成長、バブルによる隆盛、崩壊、

新型コロナウイルス感染症の流行を経て、

社会のあり様、人々の価値観は大きく変化してきました。

そして今、相次ぐ戦争や深刻さを増す気候変動など、

将来を脅かす危機も高まっています。

また、人口減少社会という厳しい現実に直面し、

社会・経済情勢は予断を許さない状況であります。

明るい未来への道筋が見えないことに対する市民が感じる不安。

これに対して何も手を打たないことは

今を生きる者としての責任放棄とも言えます。

世界の動き、そして時代の行く末をしっかりと見定め、

まちづくりを進めていく必要があります。

 

「雨が降っているなら虹を探しなさい。暗闇にいるなら星を探しなさい」

アイルランドの詩人、オスカー・ワイルドの言葉です。

明るい未来への道筋が見えない中ではありますが、

この「未来プロジェクト」が、本市が未来に進むための羅針盤の役割を果たし、

そして、先人たちがそうであったように、オール宇部市の英知を結集して

難局を乗り越えていく、そのような4年間にしたいと考えています。

引き続き、先人が築き上げたわたしたちの宇部(まち)を、

さらに魅力あふれる未来あるまちとし、

次の世代へ誇りを持って引き継いでいけるよう、

全身全霊で取り組んでまいります。

 

市議会議員各位をはじめ、市民の皆様におかれましては、

これまで申し述べました令和7年度の施策提案と当初予算案に対しまして、

深い御理解と御賛同を賜りますよう、心からお願い申し上げまして、

令和7年度の施政方針といたします。

 

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