令和2年度(2020年度)施政方針

ウェブ番号1007058  更新日 2021年2月10日

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令和2年2月25日

宇部市長 久保田后子

はじめに

令和2年3月市議会定例会の開会にあたりまして、令和2年度の市政運営に関する基本的な考え方と予算の概要について申し述べ、市議会並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願いするものです。

市政運営に関する考え方

令和新時代を迎えた令和元年度は、第1期「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の最終年度であるとともに、「第四次宇部市総合計画後期実行計画」の2年目の年であり、重点戦略プロジェクトをはじめ、各種施策を着実に推進しました。

特に、中心市街地において、大規模小売店舗が相次いで撤退する中で、「ふるさと宇部」の未来を危惧された篤志家から多額の寄附を受け、市議会の全会一致のもと、市が旧山口井筒屋宇部店を取得し、常盤町1丁目スマイルマーケット(トキスマ)のオープンにつなげることができました。

改めて、先人たちの「共存同栄・協同一致」の精神を脈々と受け継いだ市民の熱い思いに感謝するとともに、中心市街地の活性化に対する責任の重さを感じているところです。

加えて、長年交流してきたスペインのカステジョ市との姉妹都市の提携や、まちづくりの先導的な施設として念願の市役所新庁舎の建設に着手することができ、市制施行100周年とその先に向けて確かな一歩を踏み出しました。

さらに、移住専門誌が独自に実施した、住みたい田舎ベストランキングにおいて、本市は「人口10万人以上の大きなまち」総合部門で初めて第1位になりました。これは、本市の住みやすさに加え、多様な働く場の創出や起業・創業の支援をはじめ、移住定住に関する様々な政策を積み重ねてきたことが移住者の増加につながったと考えています。

また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される年を迎え、「先導的共生社会ホストタウン」に認定された本市では、スペインやマダガスカルの共生社会ホストタウンとして交流を深め、オリンピック・パラリンピックを通して多様性を理解し、誰もが生き生きと暮らせる共生社会の実現に取り組んでいます。

次に、社会経済情勢について、令和2年1月に発表された内閣府の月例経済報告では、「景気は、緩やかに回復している。」との見方が示されていますが、激動する国際情勢や新型コロナウイルスの影響などにより、先行きが不透明な状況です。

本市においては、平成28年から就航していた韓国との国際定期便が令和元年度は運休となった一方で、社会実験中のトキスマでは予想を上回る人出があり、中心市街地のにぎわい創出にも手応えを感じているところです。また、令和2年に入り、大型空き店舗に対し民間資金の導入が表明されるなど、明るい兆しが見えています。

今後は、民間資金やノウハウを活用しながら「宇部市中心市街地活性化基本計画」に基づき、様々な施策を展開することで地域の活性化につなげていきます。

次に、人口については、全国的な課題と同様に、本市でも出生数の減少などにより自然減が進む一方、移住者数の増加などにより社会減は縮小傾向にあり、令和元年の本市の人口は約16万4千人と、「宇部市人口ビジョン」において目標とする将来展望人口をほぼ達成しています。

一方で、AI・IoTなどの先端技術がこれまでの生活や社会全体を画期的に変えるSociety5.0時代の到来に対して、人口減少社会や少子高齢化が進展する中、これら革新的な技術を活用したまちづくりが鍵を握るものと考えています。

このため、AI乗合タクシーやグリーンスローモビリティなどの新しい交通の実証運行を実施するなど、デジタルテクノロジーを導入した先駆的な事業に積極的に取り組んでいます。

さらに、工業都市として道路や港湾、空港などの社会基盤を整備してきた本市が、他の都市に先駆けて5Gなどの新たな情報通信基盤を整備することにより、イノベーションの創出や起業・創業、企業誘致を加速化できると考えています。

併せて、再生可能エネルギーの普及促進などに取り組み、市民生活の質の向上につなげるスマートシティ宇部の実現を目指します。

これらの取組にあたっては、多様な人財の活躍が重要であり、兼業・副業を含めた積極的な民間専門人材の活用をはじめ、「せかい!動物かんきょう会議」の実施を通じたこどもSDGs人財の育成など、SDGs未来都市として持続可能な社会の担い手づくりに取り組んでいます。

こうした中、国においては、「継続は力なり」という姿勢を基本に、令和2年度を初年度とする今後5か年の目標や施策の方向性を取りまとめた第2期総合戦略を策定されました。

これを受け、本市においても、第1期「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の検証を行い、国の第2期総合戦略や「第四次宇部市総合計画後期実行計画」を踏まえ、人口減への対策の強化に加え、多様な人財の活躍の推進やSociety5.0など新しい視点を盛り込んだ「第2期宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、同時に策定した「宇部市中心市街地活性化基本計画」と一体的に推進し、地方創生の動きを加速化させることとしています。

この「第2期宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、「結婚・妊娠・出産・子育ての希望をかなえ、子どもの夢を育む教育を推進する」、「「稼ぐ力」を強化するとともに、安心して働けるようにする」、「関係人口を増やし、新しいひとの流れをつくる」、「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」の4つを基本目標とし、さらに、これらを支える基盤として、「多様な人財の活躍を推進する」、「新しい時代の流れを力にする」を横断的な目標に加え、取組を推進することとしています。

こうした取組を進めることにより、誰もが生き生きと暮らし活躍していくことができる社会の実現と人口の定着を図り、「暮らして良し、働いて良しの市民が誇りを持てるまちづくり」を継承するとともに、「多様な産業で輝く宇部SDGs未来都市」をさらに推進します。

令和2年度予算案の概要

これらの施策を推進する令和2年度予算を「プレ100周年希望あふれる未来スタート予算」として編成し、一般会計の予算規模は、過去最大規模の686億4千万円、令和元年度に比べ、22億3千万円の増加となり、11年連続で600億円以上の予算規模を確保することができました。

また、編成にあたっては、持続的な行財政改革の取組及び国・県等の補助制度や有利な市債の活用により、財源確保に努めました。

一方、市債残高は、本庁舎建設事業債を除くと、一般会計で約649億2千万円、令和元年度末から約10億1千万円減少し、また、財政調整基金の取り崩しも、令和元年度に比べ2千万円減少させるなど、中長期的な財政の持続性にも留意しました。

なお、特別会計の予算規模は、8つの特別会計全体で412億1千4百万円となり、令和元年度と比較して2億7千2百万円、率にすると0.7%の増となっています。

それでは、令和2年度の主な取組を、「後期実行計画」に沿って御説明いたします。

重点プロジェクト

本市が将来にわたって成長力を確保するため、4つの重点プロジェクトについて、引き続き、戦略的・部局横断的に展開していきます。

1点目は「ICT・地域イノベーションの推進」です。

本市では、産業や地域づくり、行政活動など様々な分野において、最新のデジタルテクノロジーなど、先端技術の導入・展開を積極的に推進することにより、地域課題の解決や地域経済にイノベーションを創出し、市民の利便性の向上、生活の質の向上等を目指すスマートシティの実現に取り組みます。

まず、「オープンイノベーションの推進」については、「うべ産業共創イノベーションセンター 志」において、起業・創業や経営改善などの機能を拡充するとともに、産学公金の連携によるコンソーシアムの活動を促進することにより、スタートアップやベンチャー等の起業が生まれやすい環境づくりを進めます。

また、イノベーションセンターに併設している「宇部SDGs推進センター」において、市民、企業、大学など多様なステークホルダーが連携し、経済・社会・環境分野の課題解決と新たな価値の創造やビジネスチャンスの創出に取り組みます。

次に、「中小企業のイノベーション推進」として、地元企業の優れた技術を活かしたモノづくりや生産性の向上につながるICT・IoTの導入等を促進します。

さらに、新ビジネスの創出や技術研究・開発、IT人材の育成等によるイノベーション創出に向け、「うべ産業共創イノベーションセンター 志」に5G通信環境等を整備するなど、最先端通信技術等の活用を推進し、ICT・IoT技術を通じた産業振興や地域課題の解決を目指します。

また、「多様な働き方確保支援センター」においては、女性や高齢者、就職氷河期世代など多様な求職者に対して、職業紹介や各種セミナー等を行い、求職者のニーズに応じた就労と、中小企業・小規模事業者の人材確保につなげていきます。

2点目、「コンパクトシティ・共生型包括ケアの推進」では、利便性の高い集約型のまち「多極ネットワーク型コンパクトシティ」への転換と、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことができる「地域支え合い包括ケアシステム」の一体的推進を図ります。

「多極ネットワーク型コンパクトシティの推進」については、「立地適正化計画」のもと、都市拠点や日常生活を支える地域の拠点に、都市機能や居住の維持・誘導を進めていきます。

「市役所周辺地区」では、都市拠点となる中心市街地の整備を先導的に進めるため、市役所新庁舎1期棟の建設を進めるとともに、真締川公園や常盤通りなどの再整備に向けて、関係機関との協議を進めます。

また、まちづくり会社「株式会社にぎわい宇部」と連携し、中心市街地における建物のリノベーションを促進するとともに、中央街区公園「わいわいぱぁ~く」や多世代交流スペースなどを活用し、市民団体主体のマルシェやイベント等を開催します。

さらに、中心市街地への事業所等の進出を促すため、必要となる用地や建物の取得資金に対する本市独自の融資を行います。

併せて、旧山口井筒屋宇部店跡地については、引き続き、既存建物を暫定活用して、社会実験を行いながら運営手法を検討するとともに、民間事業者からの事業提案を基本設計に反映し、実施設計につなげていきます。

さらに、中心市街地に にぎわいをもたらす再開発等を円滑に進めていくため、令和2年3月末までに「宇部市中心市街地活性化基本計画」の内閣総理大臣認定を目指しており、本計画に基づき、民間資金やノウハウを取り入れて事業を推進していきます。

次に、「地域支え合い包括ケア・共生型の福祉の推進」についてです。

高齢者や障害者をはじめ市民の誰もが、住み慣れた地域で安心して生活できる共生型の福祉の推進として、子ども、高齢者、障害者、生活困窮等に関する知識を有する「宇部市認証福祉なんでも相談員」制度を創設し、市内15カ所に開設している「福祉なんでも相談窓口」への配置や、ご近所ふれあいサロンでの「専門職派遣事業」の活用による健康づくりの推進など、地域全体で見守り、支え合う仕組みづくりを進めていきます。

また、地域住民が主役となる「元気・安心・地域づくり」を促進するため、「地域・保健福祉支援チーム」を核として、地域の課題解決や活性化、健康づくりや地域の支え合いにつながる取組を支援するとともに、地域運営基盤の充実・強化を推進するため、中間支援組織による地域内外の多様な人財の発掘・育成とマッチングを進めて、地域づくりネットワークの拡大を図ります。

加えて、誰もが安心して歩いて暮らせるまちづくりの実現に向けて、まちづくりと交通政策を一体的に進める「交通まちづくり」をさらに進めていき、既存の公共交通の利便性を高めるとともに、AIやICTを活用したニューモビリティをパッケージ化した次世代公共交通システムの構築を進めます。

3点目は、「ガーデンシティの推進」です。

平成30年11月に策定した「ガーデンシティうべ構想」のもと、基本理念である「花と緑にあふれ、市民が輝き誇りを持ち、人々の暮らしを豊かにする持続可能なまちづくり」を推進します。

まず、「まちなか緑と花の回廊づくり」として、中心市街地においては、バラを中心とした四季折々の花が楽しめる空間づくりや、シンボルロードや真締川公園、塩田川沿いの歩道空間の整備、緑・花・彫刻が調和した魅力ある空間づくりを進めるとともに、5月にはフラワーマンス、秋にはオープンカフェを実施するなど、イベントによるまちなかのにぎわい創出に取り組みます。

また、「みんなで育てる花のまち」の推進として、令和元年度に養成した花やガーデニングの専門家「ガーデンマイスター」が令和2年度から活動を開始します。併せて、地域住民が積極的に管理に関わるまちなか花壇の整備や、官民連携でガーデンシティうべを推進する仕組みづくりに取り組みます。

4点目は、「地域エネルギー・バイオマス産業都市の推進」です。

本市は、平成29年10月に、県内初となる「バイオマス産業都市」の認定を内閣府をはじめ7府省から受けており、地域のバイオマスを活用した産業の創出と資源循環型社会の形成に取り組んでいます。

引き続き、地域資源を活かした自立・分散型の持続可能な社会づくりを進めるために、産業の創出と環境問題を中心とする課題解決に取り組む人財の育成を図ります。

また、豊富な竹資源を積極的に利活用していくため、その活動拠点となる「竹LABO(ラボ)」を北部地域に設置し、関連事業者や研究機関等と連携した商品化やビジネス化に取り組みます。

さらに、令和元年11月に設立した「うべ未来エネルギー株式会社」では、地域の再生可能エネルギーなどを効率的に活用することでエネルギーの地産地消を推進し、市公共施設の電気料金の抑制や地域内経済循環を推進します。

令和2年4月からは、環境保全センターが発電する余剰電力を学校などの公共施設へ供給開始としており、「地域のエネルギーが地域の元気につながるまちづくり」を実現できるよう、官民が連携し取り組んでいきます。

その他、令和2年度予算の主な内容を、5つのまちづくりのテーマに沿って、御説明します。

1 産業力強化・イノベーション創出のまち

まず、「地域経済・雇用を支える地元産業の発展」として、企業等の誘致については、トップセールスをはじめとした企業訪問の実施や、事業所設置奨励制度を活用し、残り少なくなった産業団地への誘致活動を展開するとともに、産業団地以外の空き工場や未利用地への誘致に取り組みます。また、空きオフィスの視察や5G環境を整備した施設を体験するツアーの実施等により、中心市街地等へのサテライトオフィスの誘致にも取り組んでいきます。

さらに、平成29年11月に設立された山口・宇部テクノパーク連絡協議会と連携し、産業団地内への公共交通機関の導入に向けた通勤バスの試験運行の検証や、団地内企業の情報発信など、引き続き進出後の支援にも取り組んでいきます。

次に、「地域特性を生かした観光・コンベンションの振興」については、多くの外国人が訪れる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることから、「稼げる観光」を推進するため、その舵取り役となるDMOによる本市の多彩な観光資源を生かした観光ルートの造成や食の魅力づくりを進めていきます。さらに、「アートでつながる7市町」をテーマとして、山口県央連携都市圏域による「山口ゆめ回廊博覧会」の開催に向けた地域の魅力アップにも取り組んでいきます。

次に、「農林水産業の振興・6次産業化の推進」についてです。

農業については、将来にわたって農業を維持・発展させるため、新規就農・就業者や農業法人などへの支援を継続するとともに、就農希望者の受け入れ指導や農業女子のスキルアップを支援することにより、多様な担い手の確保を図ります。

また、ICT・IoTを活用したスマート農業の促進による作業の省力化や生産性の向上、オリーブをはじめとした戦略的作物の産地化や観光農園の開設支援など、農業の魅力向上につなげていきます。

林業については、今後、森林資源の活用及び管理を計画的に進めるため、森林環境譲与税を活用し、森林の基礎調査に加え、森林所有者に意向調査を実施します。

漁業については、就業に必要な技術の習得や生産基盤の整備、就業後の経営安定化の支援を行うとともに、水産物の販路拡大や水産資源の維持・増殖に向け、ICT・IoTを活用するスマート漁業の取組を支援します。

また、6次産業化の推進については、民間の資金やネットワーク等を活用した加工品の開発や販路拡大を促すとともに、SDGsを重視したうべ元気ブランド認証制度によるブランド力の強化に取り組みます。

さらに、本市の特色ある農林水産物を活用した食の魅力づくりとして、飲食店と連携したメニューの開発や食のイベント開催などに取り組みます。

また、小野地区特産のお茶について、生産から販売まで切れ目のない包括的な支援を行うことにより、ブランド化をはじめ、市内外や海外での消費拡大を図ります。

次に、「多様な雇用機会の創出」については、不安定な就労状態にある方や長期にわたり無業の状態にある就職氷河期世代等の方に対し、アウトリーチ支援員による相談支援を行うとともに、就労に必要な能力開発を行うなど、就職に向け一貫した支援を行います。

また、障害者雇用の促進に向けて、障害者の就労を職場内で支援する「宇部市認証ジョブアシスタント」の養成に企業等と連携して取り組みます。

また、生活困窮者等の社会参加や就労支援の仕組みづくりを進めるため、農業と福祉が連携し、人材のマッチングを行うことで、生きがい就労や農業の労働力確保につなげていきます。

2 生きる力を育み、子どもの未来が輝くまち

このテーマについては、現在策定中の「第2期宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、基本目標の1に掲げ、重点的に取り組むこととしています。

まず、「妊娠・出産・育児支援の充実」については、未来を担う子どもたちの健やかな成長を社会全体で支えていくという考えのもと、新たに、市内企業や団体等で構成する「うべ妊婦・子ども応援団」の結成・拡大に取り組みます。

その協力・連携のもと、新たに、「妊婦・子ども応援クーポン制度」や地域における子育て支援の担い手となる「うべ子育てパートナー」の養成などに取り組むとともに、さらに、「妊婦応援都市宣言」を行い、妊産婦や子育て世代を大切にする市民文化の醸成を図ります。

また、「子育て世代包括支援センターUbeハピ」の機能強化を図り、妊娠・出産から子育てにわたる不安感や負担感の解消に向けた総合相談や、切れ目のない支援を引き続き行います。

次に、「安心して子育てできる環境づくり」については、保育園での待機児童が生じないよう、受け入れ施設や保育士の確保とともに、保育補助者など多様な人財の活用促進を図ります。

また、学童保育においては、施設整備や指導員確保など、増加する利用者ニーズに適切に対応するとともに、多様な人財を活用した学習プログラムの導入や、専門的な知識を有したアドバイザーの配置など、安定した良質な保育環境を提供します。

さらに、多世代の交流や学習支援、食事の提供などを通して、子どもの健やかで豊かな成長をサポートする「子どもの居場所」づくりを促進するとともに、経済的な理由で学習の機会に恵まれない中学生を対象とした学習支援事業を拡充し、高校進学などの進路選択の幅を広げます。

一方、ひとり親家庭に対しては、「ひとり親家庭の総合相談窓口」においてワンストップで相談・支援を行うとともに、ひとり親家庭が交流する場を設け、生活向上及び自立のための支援を行います。

さらに、児童虐待の根絶に向けて、子ども家庭総合支援拠点機能の充実を図るとともに、関係機関との連携強化やスキルアップ研修を実施し、わずかな虐待の兆候も見逃すことがないよう、個別ケース毎に、危機感をもって迅速、適切に対処します。

次に、「確かな学力・豊かな心を育む教育の推進」については、これまで10年間取り組んできた「学びの創造推進事業」の成果を継続しつつ、新学習指導要領に示された、「主体的で対話的で深い学び」の視点に立った授業づくりに取り組みます。

また、令和2年度から全ての中学校区で小中一貫教育を本格実施し、小学校と中学校が「めざす子ども像」を共有した上で、9年間の学びと育ちを見通した系統性・連続性のある教育課程による指導を行います。

いじめの問題については、「宇部市いじめ防止基本方針」に基づき、未然防止や早期発見、早期対応の強化に向けて、新たにSNSを活用した いじめの相談などの通報システムを中学校全学年へ拡充します。

また、不登校対策については、「宇部市不登校防止アクションプラン」に基づき、全中学校に「校内ふれあい教室」を開設するなど、不登校の状況に応じた適切な支援の強化を図ります。

特別な配慮が必要な子どもたちへの支援としては、小中学校への教育支援員の配置や特別支援教育に係る支援ボランティアの活動を推進するとともに、障害児通所支援事業者等と連携し、パーソナル手帳の活用を推進するなど、就学前から卒業後に渡る切れ目のない支援に取り組みます。

次に、「社会の変化に対応した特色ある教育の推進」として、英語教育については、グローバル社会に対応できる人財を育成するため、宇部市独自にオンライン英会話を中学校全学年で実施するとともに、小学校1年生から外国語活動をスタートし、義務教育9年間を通した英語教育を推進することで、児童生徒の「使える英語」の習得を目指します。

また、ICT教育については、Society 5.0に対応できる人材を育成するため、AIを搭載した人型ロボットやタブレット、大型提示装置、教育用アプリなど先端のICTを活用した授業を実施します。また、プログラミング教育を全ての学校で計画的に実施し、児童生徒の情報活用能力や論理的思考力を育成します。

さらに、国の補正予算を活用して、文部科学省の「GIGAスクール構想の実現」を踏まえた高速大容量の通信ネットワーク環境の整備と、児童生徒1人1台のパソコン整備に取り組みます。

また、将来のイノベーション人財の育成を図るため、山口大学やJAXA等と連携して、児童生徒に宇宙やその先端技術への興味を抱かせる宇宙教育に取り組むとともに、プラネタリウムなど宇宙が身近に感じられる教育施設の整備について、調査・検討します。

さらに、キッズデザイン協議会やJICAの協力のもと、子どもたちを対象とした「せかい!動物かんきょう会議」を開催し、SDGsの視点に立った多様な発想・行動ができる「人財」づくりを進めます。

次に、「学校教育環境の充実」として、まず、学校施設の耐震化については、平成30年度からの継続事業となる藤山小学校体育館、令和元年度からの継続事業となる岬小学校複合施設など、体育館4棟の耐震化工事を実施します。これにより、小中学校施設の耐震化率は、平成21年度末に51.3パーセントだったものが、令和2年度末は97.4パーセントになる見込みです。

また、空調設備の設置については、令和2年6月までに小中学校の普通教室及び図書室への設置を全て完了するとともに、引き続いて給食施設への設置に着手します。

これらにより、児童生徒の学習環境の改善を図るとともに、地域コミュニティの拠点として、様々な地域住民が利用できるよう学校施設のバリアフリー化に取り組みます。

その他、学校と地域が連携したコミュニティ・スクールを推進し、地域とともにある学校づくりをさらに進めていきます。

また、市民が気軽に読書に親しめる環境づくりのため、図書館を中心に、学校・地域など多様な主体が連携した読書のまちづくりを進めます。

3 健幸長寿のまち

まず、「健康づくりの推進」については、健康で生きがいを持ち、つい歩きたくなるまち、スマートウエルネスシティを目指すために、2年目となるICTを活用した健幸ポイントプログラムにより、健康状態の計測と見える化を行います。また、科学的根拠のある個別運動プログラムを実践することで、運動習慣の定着を図り、生活習慣病の改善やフレイル予防など、介護予防の対策に取り組みます。併せて、生活習慣病等の有病者に対して、運動プログラムを医療と連携して実施し、疾病の重症化予防に取り組みます。

次に、「共生型福祉の推進」については、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が十分でない方を社会全体で支え合う成年後見制度の利用促進のため、専門職による相談機能を有する「(仮称)宇部市成年後見センター」を開設します。

また、障害者が地域社会で安心して暮らしていくために、障害者に対する市民の理解促進と、障害を理由とする差別の解消に取り組むとともに、市民や大学生の協力を得て新たに策定した「宇部市バリアフリー化マスタープラン」に基づき、ハード・ソフト両面のバリアフリー化を促進します。

次に、「介護予防・介護支援体制の充実」については、認知症予防啓発の市民集会の開催や、VR体験による認知症の正しい理解の促進、また、オレンジサポーターを組織化し認知症の人などを支援するチームオレンジの設置により、認知症の方やその家族が住み慣れた地域で安心して生活できるよう取り組みます。

次に、「地域医療・救急医療体制の充実」については、市民に適切な救急医療を提供する体制の確保を図るため、子育て世代の医療従事者へ救急勤務時の保育支援を新設します。

4 共に創る魅力・にぎわいあふれるまち

まず、「シティプロモーションの推進」については、本市の認知度を高め、関係人口の創出を図るため、首都圏や関西圏など都市部でのPR活動や、フィルムコミッションによるロケーション誘致活動等を積極的に展開していきます。

また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を迎え、スペイン及びマダガスカルの共生社会ホストタウンとして様々な取組を展開していきます。

「留学生アンバサダー」や「共生社会ホストタウンジュニアサポーター」による取材活動を通して、分身ロボットを活用した海外とのライブストリーミングや市内でのパブリックビューイングを実施し、大会前からの交流の促進と臨場感あふれる疑似体験を創出するほか、大会後に両国のアスリートと「ただいま・おかえり交流」を図ります。

さらに、共生社会ホストタウンとして、文化やスポーツなどを通じて、障害者や高齢者、外国人に限らず、誰もが生き生きと暮らすことができる社会の実現に向けて、取組を加速化していきます。

次に、「ときわ公園の魅力発信」については、県内外からさらに多くの方々に来園していただくため、情報発信の強化に取り組むとともに、花やスポーツ、食など様々なイベントを開催します。

また、冬の風物詩にもなっているTOKIWAファンタジアを県央連携事業に位置付け、新たにメディアアートの展示手法を取り入れるとともに、ときわミュージアムでは、「テクノロジー×アート」の5年間の集大成として、チャレンジ講座に参加した学生や地元企業などの参画による展覧会を開催し、ときわ公園へのさらなる誘客につなげていきます。

次に、「文化・アートに親しめる環境づくり」については、第29回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)の一次審査及び応募作品プラン展を開催するとともに、スペイン・バルセロナ現代美術館と引き続き連携し、アーティストを招いての滞在型の創作活動の実施など、令和3年に60周年を迎えるUBEビエンナーレ本展開催に向けた準備を進めます。

また、アートを介して、ひと・もの・ことをつなぎ、まちの創造的発展に向けて自ら活動する「アートコミュニケーター」を育成し、市民が身近に文化やアートに親しめる環境づくりを進めます。

次に、「スポーツ活動の推進」については、本市が運営を支援する一般社団法人 宇部市スポーツコミッションが、DMOと連携し、ボッチャなどのパラスポーツやダンス、本市野外彫刻などを活用したユニバーサルツーリズムの旅行商品を造成するなど、スポーツによる元気な人づくり・まちづくりを一層進めていきます。

また、恩田運動公園については、スポーツの振興と市民の憩いの場として、新たな魅力とにぎわいあふれるエリアにするため、令和元年11月に策定した「恩田スポーツパーク構想」に基づき、計画的に整備を進めます。

一方、神原公園においては、プレーパークを定期的に開催し、子どもたちの自由な発想による外遊びを推進します。

次に、「若者・女性の活躍促進」については、若者の社会的・職業的自立を図るため、多世代ふれあいセンター内に設置した「若者ほっとカフェ」や「若者ふりースペース」の運営に民間活力を導入し、相談対応に加え、学習やスポーツなどの活動を合わせて実施することで、社会への参画や自立につながる支援を行うとともに、市内の若者が企画・実践するまちづくりに向けた取り組みを促進します。また、中学校卒業後や高校中退後の進路未決定者への相談・支援を適切に進めます。

さらに、平成28年度から山口大学や宇部工業高等専門学校と連携して開設している「テクノロジー×アート」の講座や若者クリエイティブコンテナでのまちづくり活動につながる、山口大学との社会連携講座を開催することで、地域人材の育成や地元定着への促進につなげていきます。

また、うべ女性活躍応援ネットワークの活動を中心に、女性の活躍推進に向けた意識啓発や人材育成の充実を図るとともに、誰もが働きやすい職場環境づくりを促進するため、宇部市女性活躍推進企業の認証拡大や、うべイクボス宣言企業の拡大を図り、具体的な取組を行う企業を支援します。

併せて、男性の育休取得の促進に向け、企業向けの育休取得奨励助成金を拡充し、ワークライフ・バランスについての理解と男性の家事・育児参加を促進します。

次に、「移住・定住の促進」については、さらなる社会減の縮小に向け、住みたい田舎ベストランキング、全国第1位の知名度を生かしながら、移住定住のワンストップ相談窓口である移住・定住サポートセンターにおいて、仕事や住まいのマッチングをはじめ、ニーズに沿った移住相談、各種支援制度の紹介など、きめ細かい支援を行うとともに、首都圏等に向けた魅力発信や本市の暮らしを体験できる移住体験ツアー等を実施し、さらなる移住者の増加につなげていきます。

また、将来的な移住の裾野拡大や多様な主体の参画によるまちづくりに向けて、シティプロモーションやふるさと納税制度、大幅に制度改善された企業版ふるさと納税制度を活用するなど、地域に多様な形で継続的に関わる「関係人口」の創出に取り組みます。

次に、「中山間地域の振興」については、廃校舎を活用し、豊かな自然環境の中で食とアートが融合したイベントの開催や、「竹LABO(ラボ)」による新たなビジネスの創出に取り組むとともに、万倉地区の岩戸神楽舞をはじめ、地域特有の伝統文化の継承による観光振興など、中山間地域の魅力を発信し、交流人口や移住・定住人口の増加につなげていきます。

5 安心・安全で、快適に暮らせるまち

「環境保全対策の推進」については、まず、現在の指定ごみ袋の制度を見直し、ごみの排出量に応じてごみ処理経費を負担していただく有料化の仕組みを導入します。

併せて、生ごみ処理機購入助成など、ごみ減量への取組に対する支援制度等を充実し、一層のごみ減量に取り組みます。

また、世界規模で問題となっているプラスチックごみの削減に向けて、使い捨てプラスチック製品の利用抑制や分別回収の徹底など、廃棄されるプラスチックごみの削減に向けた取組を進めます。

次に「災害に強い安全なまちづくり」として、「災害死亡者ゼロ」を目標に、防災情報を全市民に届けるための防災屋外スピーカーの工事を実施するとともに、自治会単位での呼びかけ避難体制の構築等を推進します。

また、消防庁舎の耐震化や多様な災害に対応可能な消防団の装備の充実と消防団員の確保に取り組み、防災・減災・消防力の強化を図ります。

さらに、避難所の生活環境の良好化に向け、栄養豊富なあたたかい食事の提供に向けた飲食関係事業者との協力体制を強化します。

また、台風や集中豪雨等による大規模停電対策として、LPガスとガソリンによるハイブリッド型非常用小型発電機を拠点避難場所等に配備します。さらに、電気自動車からの電力供給用のパワーコンディショナーを市内4カ所に配備するとともに、災害時協力者登録制度を創設し、電気自動車所有者を対象に、災害時による停電時に避難所等の電力供給のために非常用電源として、電気自動車の提供・協力に取り組みます。

また、防災上の危険箇所のハード面の整備では、危険ため池の解消や護岸の嵩上げ等による海岸の高潮対策、急傾斜地の崩壊防止対策、河川や水路の氾濫防止対策に取り組みます。

次に、「人権の尊重」については、SDGs未来都市として、本市の市民宣言にうたわれている「人間が尊重される都市づくり」を目指し、共生社会の観点から、障害者や外国人、さらにLGBTをはじめとする性的マイノリティに対する偏見などの人権問題に対応していくとともに、学校や地域、家庭、職場など様々な場を通じ、関係機関等と連携を深めながら、人権教育・啓発活動を効果的に推進していきます。

次に「都市環境の質的整備」については、平成29年に策定した「道路の個別施設計画」(舗装編)に基づき、緊急輸送道路などの重要度の高い路線、「あんしん歩行エリア」とその周辺、損傷度の高い路線について、舗装修繕を計画的かつ効率的に実施し、健全な道路状態の維持に取り組みます。

6 計画の実現に向けて

「宇部市行政サービス改革推進計画」のもと、行政の様々な分野にAIなどの革新技術を活用し、効果的・効率的な行政サービスを提供するとともに、PPP/PFIの手法の積極的な活用により、多様な主体との連携・協働・共創を図ることで、本市が抱える課題の解決に向けて取組を進めていきます。

また、民間専門機関のノウハウを取り入れ、人財育成やメンタルヘルス対策、働き方改革の取組などを連携させ、効果的・効率的な仕組みとすることで、職員のスキルと組織力の向上を図ります。

さらに、組織ガバナンス強化のため、コンプライアンス及び行政事務の適正化に関する研修を職層に応じて実施します。

また、職員を国の機関等へ派遣し、スキルアップと意識改革を図るとともに、デジタル専門人材など民間企業等の外部人材を登用し、組織の多様性を高め、そのノウハウや人脈を活かし、本市の魅力・価値の向上につながる事業展開を行います。

さらに、「宇部市公共施設等総合管理計画」に基づいた公共施設のマネジメント原則に取り組むとともに、施設の状態、役割、利用状況を考慮し、個別施設計画を策定していきます。

また、市民の市政への関心や参画意識を高めるため、ホームページやさまざまな広報媒体の特性を生かした効率的・効果的な市政情報の発信に取り組むとともに、市民の声を市政に生かすため、「ふるさと元気懇談会」や「インターネット市民モニター制度」等を充実させていきます。

7 公営企業

上下水道事業については、持続可能で安定した事業経営を行うため、水道事業の広域化を進めるとともに、下水道事業区域の見直しや合流式ポンプ場では全国初のDBO方式により工事着手している玉川ポンプ場事業など、官民連携手法に取り組んでいきます。

また、地震などによる被害を最小限にとどめるため、浄水場や配水池の耐震化、ポンプ場の統廃合や合流管の改築など、老朽施設の更新を積極的に進めていきます。

次に、交通事業については、安心・安全な運行を行うとともに、安定した事業運営に向け、運転士不足の解消に最優先で取り組みます。

また、「使いやすく、持続可能な地域公共交通網」を形成するため、引き続き公共交通の利便性の向上を図るとともに、事業実施の最適化に取り組んでいきます。

むすびに

以上、申し上げました事業をはじめとする諸施策の執行に当たりましては、職員一人ひとりが、市政発展への使命感と責任感を持ち、まちづくりの主役である市民とともに、スピード感を持って取り組んでいきます。

令和2年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、プレ100周年でもあります。

先人たちが、「宇部の精神(こころ)」である「共存同栄・協同一致」を原動力に築き上げた「ふるさと宇部」を、将来にわたって輝き続ける宇部市として次の世代に引き継ぐため、総合計画の求める都市像である「みんなで築く活力と交流による元気都市」の実現を目指し、市制施行100周年に向け、全力で取り組んでいきたいと思います。

市議会議員各位をはじめ、市民の皆様におかれましては、これまで申し述べました令和2年度の施策提案と当初予算案に対しまして、深い御理解と御賛同を賜りますよう、心からお願い申し上げまして、令和2年度の施政方針といたします。

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