宇部方式とその理念

ウェブ番号1002754  更新日 2021年2月10日

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「宇部方式」誕生の背景

本市は、戦災により市街地の大半を焼失したものの、再建にかける市民の熱意と石炭景気に支えられ、戦後順調な復興を遂げましたが、産業の発展とともに、企業の石炭使用量が増加し、ばいじん汚染が大きな問題となりました。そこで、市民の生活環境を守るため、1949年(昭和24年)に「宇部市降ばい対策委員会」が設置され、1951年(昭和26年)には、全国に先駆けて、条例に基づいた「産・官・学・民」からなる「宇部市ばいじん対策委員会」を設置し、相互信頼と協調の精神をもって、話し合いによる、全市民が一体となった「宇部方式」といわれる独自の公害対策の取り組みを積極的に展開し、ばいじん汚染の克服に努めました。

この「宇部方式」は、産業公害だけでなく、近年、都市生活型公害や地球環境問題を解決する手法としても注目され始め、「市民、企業、学識者、行政」の役割分担による連携、つまりパートナーシップを核としており、そのルーツは明治時代にまで遡ると言われています。

明治維新の流れの中で、経済的自立を目指す宇部の人々の間では、いちはやく石炭資源に目覚めた地域主義が台頭し、その母体となったのは、1886年(明治19年)に発足した「宇部共同義会」と言われています。「宇部共同義会」は、村民のみで組織され、石炭鉱区の集中管理を行うとともに、石炭で得た利潤を浪費することなく、村立中学校建設や県立宇部工業高校の誘致をはじめ、警察署、郵便局の設置、常盤公園の整備、図書館建設など、社会福祉や公共事業に投資し、地域の基盤整備に努めるもので、1888年(明治21年)設立の政治結社でもあった「宇部達聡会」の誕生とともに、村政に大きな影響を与え、ここに宇部の人々の結集を見ることができます。

一方、宇部の中心産業となった炭鉱経営についても、「宇部式匿名組合」と言われる独特のシステムが確立されていきました。これは、一人の頭取に絶対的な信頼を置き、権限を与え、給料は役割の上下に関係なく同額で、食事も炭鉱側が賄い、職員全員が食卓を囲む、非常に家族的な絆が強いものでありました。

このような経緯のなかで、強い郷土愛と自主独立のもとに、宇部の伝統とされる「共存同栄・協同一致」の精神が、「産・官・学・民」の間に脈々と引き継がれ、先人達の努力もあり、いち早く「宇部方式」というパートナーシップを核とした、独自の公害対策が生み出されたものと考えられています。

「宇部方式」の理念

「宇部方式」は、情報の公開を基礎に、地域の「産・官・学・民」の四者が相互信頼、連帯の精神に根ざして、一体となって、自分たちが住んでいる地域社会の健康は自分たちで守ろうという自治意識のもと、科学的調査データに基づく話し合いによる発生源対策を第一主義に、法令や罰則に頼ることなく、むしろそれらを先取り或いは更に進める形で、公害の未然防止と環境問題の解決を図ろうとする地域ぐるみの自主的な活動を基本理念としております。

「宇部方式」による公害対策の取り組みは、国が公害対策基本法を公布し本格的に公害対策に取り組み始めた1967年(昭和42年)より約20年早い1949年(昭和24年)に開始されました。この取り組みは、その後の国の「ばい煙の排出の規制等に関する法律」にも大きな影響を与え、県の公害防止条例や宇部市環境保全条例にも「宇部方式」の精神は活かされました。その結果、宇部市を含め山口県には現在まで、公害病認定患者が一人も出ず、公害対策先進都市として高い評価を受けております。

1997年(平成9年)には、こうした取り組みが諸外国においても、持続可能な開発の基盤であります「環境の保護と改善」を推進するにあたって、広く活用できるものとして国際的にも高く評価され、国連環境計画(UNEP)から「グローバル500賞」を授与されました。また、同年10月に国・県などの協力を得て宇部市で開催された、「山口・宇部'97国際シンポジウム」では、「宇部方式」の精神が、世界各国が直面している都市大気汚染や地球温暖化対策の実施に際し、新たな協力体制・パートナーシップの構築に有効な先駆事例として「宇部アピール」をアジアへ、そして広く世界へ発進しました。

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