宇部市債権管理及び回収に関する基本方針
宇部市は、平成26年8月に、市が取り扱う債権の管理回収に関し、基本的な考え方や全庁統一的な取り扱いを定めた「宇部市債権管理及び回収に関する基本方針」を策定しました。
今後、この基本方針に沿って、全庁的に債権管理の適正化及び収入未済額の縮減を図っていくこととします。
1 基本方針策定の背景及び位置付け
(1)基本方針策定の背景
平成25年度決算見込みにおいて、一般会計、特別会計及び基金の収入未済額の合計は、約49億円です。
市税を中心とした徴収体制の整備など一定の努力の結果、収入未済額は減少傾向にありますが、依然として高水準で推移しており、収入未済額の縮減は、自主財源の確保のみならず、市民負担の公平性と受益者負担の徹底を図る観点からも厳正な対応が求められるところです。
債権の管理・回収については、それぞれの債権担当部署で取組んでいるところですが、人員体制や回収対策への取組み状況を見ると、その対応に差が生じており、体制の強化や債権の管理・回収スキルの向上を図ることにより、債権の管理・回収をより一層推進していく必要があります。
このことは、監査委員による「行政監査の結果に関する報告について(宇監第152号平成25年11月14日)」において、種々指摘され、改善・検討すべき事項について、意見をいただいたところです。
そこで、平成26年度から、未収金対策を強化するため、総務管理部内に債権管理回収室を設けるとともに、宇部市が取り扱うすべての債権の適正管理と円滑な回収事務に向けて、関係部署との連携を図るため、「宇部市債権管理回収対策委員会」を設置したところです。
そして、この委員会で、これまで基本的な考え方や全庁統一的な取扱いが存在していなかった債権の管理・回収に関して、これらを明確にし、今後の収入未 済額の縮減に向けての指針とするため、「宇部市債権管理及び回収に関する基本方針」を策定しました。
収入未済額の推移
平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | |
---|---|---|---|---|---|
一般会計(千円) | 2,813,280 | 2,721,634 | 2,640,179 | 2,547,390 | 2,337,769 |
特別会計(千円) | 2,776,469 | 2,627,011 | 2,690,756 | 2,647,866 | 2,549,576 |
基金(千円) | 13,890 | 12,387 | 11,144 | 10,443 | 10,207 |
合計(千円) | 5,603,639 | 5,361,032 | 5,342,079 | 5,205,699 | 4,897,552 |
対前年度増減額(千円) | 166,635 | -242,607 | -18,953 | -136,380 | -308,147 |
対前年度増減率 | 3.06% | -4.33% | -0.35% | -2.55% | -5.92% |
(2)基本方針の位置付け
本基本方針は、地方自治法・同施行令及び地方税法等関係する法令の規定に基づき、債権の管理・回収における基本的な考え方、具体的な取組みを示すとともに、より一層の債権管理の推進のための環境整備に向けた取組みについて示したものです。
債権管理及び回収に係る法令等の体系図
第1階層
- 地方自治法及び地方自治法施行令
- 地方税法など個別の法律
第2階層
- 宇部市債権管理及び回収に関する基本方針
第3階層
- 宇部市財務規則
- 宇部市税賦課徴収条例
- 宇部市債権管理条例など
第4階層
- 宇部市徴収実務マニュアル(市税)
- 宇部市債権管理回収マニュアル
- 各債権管理及び回収に関する個別マニュアルなど
2 基本方針
(1)基本的事項
ア 趣旨
市財政の健全化、市民負担の公平性及び受益者負担の徹底を図るためには、適正な債権管理の推進と収入未済額の縮減に取り組むことが必要です。
これを全庁一体的に実現するために、債権管理に関する基本的な考え方と 具体的な取組みを示す「宇部市債権管理及び回収に関する基本方針」を策定するものです。
イ 対象債権
市が保有するすべての債権とします。
ウ 基本的な考え方
債権の管理・回収に関する事務は、各債権に適用される法令、条例、契約等に基づいて、適正な債権管理と効率的・効果的な債権回収をします。
(2)債権の分類とその法的な取り扱い
債権は、公債権(公法上の原因に基づいて発生する債権)と私債権(私法上の原因に基づいて発生する債権)に大きく分類され、さらに公債権は、強制徴収公債権(地方税の滞納処分の例により、本市自ら強制徴収できるもの)と非強制徴収公債権(本市自ら強制徴収ができないもの)に区分されます。
これらは、それぞれ債権の管理方法や時効制度など、その取扱いが異なるため、債権管理にあたっては、十分注意し、個々の債権の法律上の規定に応じて取り扱うことが必要です。
地方公共団体の債権
分類 | 公法上の債権 | 公法上の債権 | 公法上の債権 | 私法上の債権 |
---|---|---|---|---|
類型 | 強制徴収公債権 | 強制徴収公債権 | 非強制徴収公債権 | 私債権 |
債権名 | 地方税 | 分担金、加入金、過料、法律で強制徴収に関して定めのある使用料その他の歳入 | 法律で強制徴収に関して定めのない使用料、手数料等 | 契約等の私法上の原因に基づくもの(財産収入、貸付金等) |
滞納処分及び強制執行等 | 強制徴収(滞納処分)ができる 地方税法第331条ほか |
強制徴収(滞納処分)ができる 地方自治法第231条の3第3項、その他個別法の規定 |
強制徴収(滞納処分)ができず、強制執行が必要 地方自治法施行令第171の2 |
強制徴収(滞納処分)ができず、強制執行が必要 地方自治法施行令第171の2 |
督促 | 地方税法第329条第1項ほか | 地方自治法第231条の3第1項 | 地方自治法第231条の3第1項 | 地方自治法施行令第171条 |
延滞金 | 地方税法第326条第1項ほか | 地方自治法第231条の3第2項 (宇部市延滞金の徴収に関する条例) |
地方自治法第231条の3第2項 (宇部市延滞金の徴収に関する条例) |
規定なし |
消滅時効 | 原則5年(時効の援用は不要) 地方税法第18条 |
原則5年(時効の援用は不要) 地方自治法第236条第1項、その他個別法の規定(※5年未満の債権もある) |
原則5年(時効の援用は不要) 地方自治法第236条第1項 |
原則10年 (短期消滅時効が適される債権も多数ある) ※時効の援用が必要 |
(3)債権の管理・回収の具体的取組み
ア 適正な債権管理
(ア)債権の発生
公債権は賦課処分(公法上の原因)に基づいて、私債権は契約等(私法上の原因)に基づいて発生します。
債権の額の決定にあたっては、関係書類を十分審査・確認し、正確を期することが重要です。また、債権の内容に応じて、担保や保証人等を確保するなど、滞納となることを未然に防止することが必要です。
(イ)日常の管理
a 台帳・ファイルの管理
債権の管理では、債権の発生以降の納付状況や交渉記録等の情報記録が重要です。このため、情報を記載した台帳・ファイルを作成して、債権を適正に管理し、効率的に事務処理を行います。
b 納期内納付の推進
滞納の発生を防ぐためには、納期内納付が重要です。このため、口座振替の勧奨、コンビニでの収納など積極的に周知することにより、納期内納付を推進します。
c 時効の管理
債権の管理を行う上で、時効の管理は極めて重要です。漫然と時効を迎えることがないよう、根拠法令に定める各債権の消滅時効期間を的確に把握し、必要に応じて時効中断の措置を講じます。
イ 効率的・効果的な債権回収
(ア)滞納債権への早期対応
初期対応を迅速かつ的確に実施することが、収入未済の縮減につながることから、納期内に納付されない場合は、法令等に基づき督促手続きを徹底するとともに、納付案内センターを活用し、納付を促します。
また、速やかに納付交渉や納付相談を実施し、早期の納付を求め、あるいは、滞納発生の原因、納付の意思、収入や財産状況などの把握に努めます。
(イ)徴収方針の検討
納付交渉や財産調査(庁内、官公庁、金融機関)などを通じて、生活環境や収入・資産の状況を正確に把握した上で、資力に応じた適切な徴収方針を検討します。
(ウ)徴収の猶予
災害、病気、無資力などの理由により、滞納債権を直ちに徴収することが困難であると判断される場合には、法令に基づく徴収猶予や履行延期の特約等(納付期限の延長、分割納付)を適用します。
(エ)滞納処分及び法的措置
納付資力がありながら、納付しない者に対しては、法令に基づき対処します。強制徴収公債権については、差押え、換価等の滞納処分を実施します。 非強制徴収公債権や私債権については、訴訟手続や強制執行等の法的措置を行います。この場合、議会の議決が必要となります。
(オ)債権の消滅
徴収する権利が消滅した債権は、不納欠損処分(その処分時点で、当該債権額を翌年度繰越額から除去する決算上の処理)を行います。
a 時効による消滅
公債権については、各債権の消滅時効の期限を経過した場合は、時効の援用を要さず、時効が完成し、債権が消滅します。また、私債権については、債務者が時効を援用することにより、時効が完成します。
b 免除
非強制徴収公債権及び私債権については、法令の規定により、債務者が無資力またはそれに近い状態であることなどから、履行延期の特約を行った場合、当初の履行期限から10年を経過してもなお同じ状態である場合
に、権利を免除することができます。
c 債権放棄
あらゆる措置を講じてもなお徴収の見込みのない債権については、効率的、合理的な債権管理の妨げとなることから、法令に基づく滞納処分の執行停止や議会の議決を経て、債権の放棄を適正に行います。
(4)債権の管理・回収のための環境整備
ア 債権管理回収室の設置
強制徴収公債権のうち5債権(市税、国民健康保険料(税)、介護保険料、後期高齢者医療保険料、保育料)について、各債権担当課において処理困難な滞納事案にかかる、徴収、収納及び滞納処分事務を集約して、引継ぐために、債権管理回収室を設置しました。これにより、滞納繰越額の圧縮と収納率の向上を図るとともに、債権管理回収マニュアル等を活用し、各債権担当課に対して、滞納整理について助言・指導していきます。
イ 宇部市債権管理回収対策委員会の設置
適正な債権管理及び円滑な回収事務を行うために、宇部市債権管理回収対策委員会を設置しました。
この委員会を通じて、関係部署が緊密に連携し、情報を共有することで、債権の管理・回収に関する取組みを全庁一体となって推進します。
ウ 債権管理回収マニュアルの策定
市が取り扱う公債権及び私債権の適正な管理と円滑な回収事務のため、その事務手続きなどを定めた債権管理回収マニュアルに従い、各債権担当課において、マニュアルに沿った事務を徹底することで、滞納債権の縮減につなげていきます。
エ 人材の育成
債権の管理・回収に携わる職員には、一定の法務の知識や技術を備えることはもちろんのこと、さらなるスキルアップが求められるため、専門研修の充実を図り、人材を育成します。
オ 条例等の整備
非強制徴収公債権や私債権については、訴えの提起などの法的措置や権利放棄に係る手続きを条例等により簡素化することで、円滑な債権整理を実施している自治体が見受けられます。
本市においても、適正な債権管理の推進と収入未済額の縮減に向けて、条例等の整備について、宇部市債権管理回収対策委員会で協議します。
(5)債権管理計画の策定とPDCA
毎年度、債権ごとに収納率、滞納の縮減額等の数値目標を設定し、その目標に向かって対策を進めることにより、適正な債権管理を実現するため、債権管理計画を策定します。また、債権担当課と債権管理回収室との連携のもと、計画の進行管理を行うとともに、PDCA手法により、継続的に改善を図ります。
(6)組織・体制の検討
債権管理及び回収に関して、さらに実効性を高めるために、組織・体制のあり方について検討します。
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