平成29年度(2017年度)施政方針

ウェブ番号1007061  更新日 2021年2月25日

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平成29年3月1日

宇部市長 久保田后子

平成29年3月市議会定例会の開会に当たりまして、平成29年度の市政運営に関する基本的な考え方と予算案の概要について申し述べ、市議会並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願いするものです。

はじめに

私は、「市民と語る、考える、動く」を市政運営の基本姿勢とし、2期目に掲げた「改革と成長の戦略プラン100」を溶け込ませた「第四次宇部市総合計画中期実行計画」を基調に、「みんなで築く活力と交流による元気都市」を目指し、今日まで全力で取り組んできました。

この結果、「第四次宇部市総合計画中期実行計画」については、計画期間をあと一年残すところとなりましたが、目標値について、ほぼ達成する見込みです。

主な事業としては、安心安全な生活環境づくりとして、市道立熊沖田線や鍋倉草江線の開通、西岐波団地の建て替え、また、教育振興への取組として、学校施設の耐震化や学校給食センターの建設などに取り組みました。

また、市制施行90周年記念事業として整備した「ときわ動物園」のグランドオープンなど、魅力が詰まった新しい施設の整備にも取り組み、平成26年には観光客が初めて100万人を超え、交流人口の増加につながりました。

一方では、地域支え合い包括ケアシステムの推進など、高齢者や障害者の福祉増進、予防医療や健康づくり、子育て支援の充実を図るとともに、魅力ある優れた教育機会の提供に努め、子供たちの学力向上を図るなど、ハード事業とソフト事業を連携させながら、様々な分野で宇部市を元気にする施策を展開してきました。

なお、私の市長就任時と比べますと、産業団地の分譲率については、総区画数の約2割から8割を超えるまでに、また、学校施設の耐震化率については、約5割から約9割まで、進捗させてきたところです。

スピード感を持って、様々な施策に取り組んできた結果、近年、合計特殊出生率は上昇傾向にあり、平成27年の本市の人口は、国立社会保障・人口問題研究所による推計値と比較して、約1600人上回るなど、人口の減少幅の圧縮が図られ、着実に政策効果が現れているものと考えています。

このような中、市民の暮らしをより良くするために、「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を平成27年10月に策定し、取組をより一層加速化させているところです。

本市を取り巻く諸情勢と本市の財政状況

内閣府発表の平成29年1月の月例経済報告では、「景気は、一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。」との見方が示されていますが、一方では、少子高齢化や人口減少といった構造変化によって、消費や生産など、経済活動において地域間でばらつきが生じており、地方においては未だ景気の回復局面には至っていないものと考えています。

そこで、国は、地方創生の更なる深化を図るために、平成28年12月に「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」を閣議決定し、この方針を踏まえながら、一億総活躍社会の実現や経済再生の取組とも合わせ、新年度に向けて、97兆4547億円と過去最大規模の予算編成を行ったところです。

一方、本市の財政状況は、平成27年度決算において、財政の健全性を示す実質公債費比率や将来負担比率がともに改善傾向にあり、また、財政構造の弾力性を測る目安とされる経常収支比率も93.1パーセントと、平成26年度の95.2パーセントから改善していますが、市税など一般財源が減少に転じる中、社会福祉関係経費が増加しており、依然として厳しい状況が続くものと予測しています。

市政運営に関する考え方

我が国は今、人口減少・超高齢化が進行する中にあって、地域活力の低下などの多くの課題が山積しており、「待ったなし」の厳しい状況が続いています。

このような中にあって、私たちはオール宇部市で、困難な課題に真正面から立ち向かい、未来を生きる世代のため、様々な取組にチャレンジし、人口減少に負けない、活力と魅力のある希望あふれるまちづくりを進め、持続可能な発展をしていかなくてはなりません。

平成29年度は「第四次宇部市総合計画中期実行計画」の仕上げの年、「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」は3年目を迎え、来たる市制施行100周年に向けて、更なるステップアップの年として、これまでの取組を一層深化させ、効果的な事業展開を進めていきます。

地方創生の原動力は「ひと」であり、本市が将来にわたり活力を維持し、成長し続けていくためには、「地域の将来を支える人づくり」が重要です。今後、労働力人口が減少していく中にあって、若者から高齢者までの各世代にわたる幅広い人材が活躍できるまちづくりを進め、「ひと」が育つことで、「しごと」につながる好循環の創出を図ります。

このため、「人づくり」を重点課題と捉え、若い世代の結婚や出産、子育て支援の充実を図るとともに、英語・ICTなど時代のニーズに応じた教育や学校施設の耐震化の推進を図るなど、「人を支える施策」の充実に積極的に取り組んでいきます。

また、各施策の推進に当たっては、「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げた5つの基本目標を軸にして、関連する施策に横串を通し、横断的・一体的に展開するとともに、部局間連携、或いは多様な主体との連携・協力・協働によって、新たな「枠組みづくり」や「担い手づくり」を進め、地域の総合力を発揮し、事業効果の相乗的なレベルアップを図っていきます。

平成29年度予算案の概要

こうした考えのもと、平成29年度は、「第二次行財政改革加速化プラン」の実践や国・県等の補助制度の活用などにより財源確保に努め、総合戦略に位置づけた事業に加え、公共施設の長寿命化・耐震化事業を着実に進めていく、「わがまち創生加速化予算」とし、一般会計の予算規模は627億8千万円となりました。

これは、平成28年度と比べ、4億3千万円の減少となりましたが、平成28年度の12月及び3月補正予算において、平成29年度の取組を前倒ししたことなどによるものです。なお、平成22年度以降は、本市の地域活力創出のために、予算規模をそれまでの500億円台から600億円台に拡大しており、8年連続で600億円以上の規模を確保することができました。

一方、市債残高は、一般会計で約683億3千万円と、平成28年度末からは約15億1千万円減少する見込みです。

また、庁舎建設基金の積み増しに加え、財政調整基金の取り崩しも平成28年度に比べ2千万円減少させるなど、中長期的な財政基盤の確立にも留意したところです。

なお、特別会計の予算規模は、9つの特別会計全体で約445億2千万円となり、平成28年度と比較して約11億1千万円、率にすると2.6パーセントの増となっています。

1 安定した雇用を創出する

「しごと」と「ひと」の好循環を確立するためには、「しごと創り」が重要であり、特に若い世代の流出に歯止めをかけ、活力あるまちづくりを進めるためにも安定した雇用の創出を図る必要があります。

まず、「環境エネルギー産業の育成・振興」については、食品リサイクルループの構築による循環型社会の形成と新たなビジネスモデルの創出に取り組みます。このため、事業者や市民と協働して、バイオガス発電モデルプラントでの実証や本格的な施設整備に向けた検討を行うとともに、昨年10月に創設した宇部市バイオマス産業共創コンソーシアムにおいて、生ごみバイオガスをはじめとしたプロジェクトの推進に取り組みます。

次に、「ヘルスケア産業の育成・振興」については、ICTを活用した生活習慣の改善プログラム等の企画・実証など、健康ビジネスモデルの創出に取り組みます。

次に、「観光産業の育成・振興」については、近隣市との連携により、DMOの構築に向けた体制整備を進めるとともに、観光資源の活用と効果的な情報発信により、観光客誘致に積極的に取り組みます。

また、県や関係機関と連携し、平成28年11月に就航した韓国仁川インチョン国際空港との国際定期便や、台湾との連続チャーター便の運航等を契機に山口宇部空港の更なる利用促進に繋げるとともに、外国人観光客の受け入れ環境の整備を図ります。

次に、「6次産業化・農商工連携の推進」については、「うべ元気ブランド」の認知度を更に高めるため、戦略的な情報発信を行うとともに、認証製品の売上向上につながる取組を支援します。

また、「うべまるごと元気ネットワーク」等を活用し、民間事業者との連携により、本市の一次産品を原材料とする加工品の開発や販路拡大に取り組むとともに、竹林資源の有効活用に向けた総合的な対策について、平成28年度に設立した「山口うべ竹エコシステム協議会」を中心に、検討・実施していきます。

更に、伝統的工芸品である赤間硯のブランド化を推進するため、県と連携して、明治維新150年に関連する各種イベント等を活用しながら、赤間硯の商品力強化・販路開拓等に取り組みます。

次に、「雇用の促進・起業創業の支援」については、まず、求職者と市内中小企業との人材マッチングを行う「UBEはたらこBASE」の取組の中で、企業訪問ツアーなどを通じて、企業の魅力や高い技術力を発掘することで、多様な人材の確保を支援します。

また、就労を希望する女性に対しては、女性就労相談窓口「ウィメンズワークナビ」において、無料職業紹介や子育てサークル等への出張相談を実施することにより、就業相談から就職決定までの支援を行うとともに、利用者のワーク・ライフ・バランスに関する多様なニーズにワンストップで対応します。

特に、再就職を希望する子育て中の女性等に対しては、託児を行うなど、参加しやすい環境を整えて、知識・技能を習得する研修等を実施するとともに、職場体験や職場実習を通して受け入れ企業とのマッチングを行い、就職決定まで支援します。

更に、本市での起業創業希望者に対しては、ふるさと起業家支援制度により創業時の経済的な負担を軽減するとともに、産・学・公・金連携による「うべ起業サポートネットワーク」を中心に、新たな事業創造や起業家相互の交流促進などの支援を行います。

また、中央町地区を対象に、空き店舗の再生と人材育成を目的としたリノベーションスクールを開催するとともに、空き物件を活用した場合の家賃支援を行います。

次に、企業等の誘致については、トップセールスをはじめとした企業訪問の実施や、「宇部市イノベーション大賞」等の事業所設置奨励制度を活用し、残り少なくなった産業団地への戦略的な誘致活動を引き続き積極的に展開するとともに、中心市街地へのオフィス等の誘致やICT企業の誘致、サテライトオフィスの誘致活動にも取り組んでいきます。また、山口県央連携都市圏域での取組の一環として、「(仮称)山口宇部テクノパーク連絡協議会」を設置し、新たな価値を創出する取組について協議・検討します。

次に、「中小企業等の振興」については、従来の提案公募による地域商業課題の解決に向けた支援に加え、「販路拡大・店舗運営のスキルアップ」を指定課題とした取組や、新たに電子商取引(eコマース)や 検索エンジン最適化対策(SEO対策)なども加え、ICTの実践的な活用による販売力向上に向けた支援を行うとともに、金融機関との連携による販路開拓や元気な商店街づくり、「メイド・イン・ウベものづくり」等への支援を引き続き行います。

また、中小企業の海外での事業展開を促進するため、「宇部市グローバルビジネスセンター」を拠点として、必要な情報を提供するとともに、関係機関等と連携しながら個別案件についての支援を行います。

次に、「農林水産業の振興と担い手の育成」について、まず、農林業については、多様な担い手の確保を図るため、新規に農業参入する企業や集落営農法人への支援に加え、万農塾や先進農家、森林組合における研修及び就農時の経営を支援することなどにより、新たな就農者、就業者を育成します。

また、お茶などの特産品の生産振興や販路拡大を支援するとともに、安心・安全な農産物の生産拡大を図るため、環境保全型農業や有機農業への支援を行います。

耕作放棄地対策については、これまでの ほ場整備地区内の解消に続き、市内全域においても営農再開に対する支援や、薬用作物・オリーブなど、本市が推奨する戦略作物の栽培を促進するとともに、農地中間管理機構や農用地借受奨励助成金を活用した農業参入企業など、多様な担い手による農地の集積及び国の直接支払事業により農地の保全を図ります。

また、平成27年度から実施しているサルに重点をおいた有害鳥獣対策については、有害鳥獣捕獲員として猟友会と更なる連携を図るとともに、有害鳥獣対策支援員による初動体制の強化等により、農業被害の軽減を図ります。

次に、漁業については、国・県及び漁業協同組合と連携して、長期に渡る漁業技術の研修や、研修修了後の就業に必要な生産基盤整備、独立直後の経営安定化の支援を行うことによって、新たな担い手の確保を図ります。

また、漁業資源の維持増殖を図るため、県と連携して魚礁整備を行うほか、種苗放流やカイガラアマノリの生産活動を支援するとともに、漁業所得の向上を図るため、漁業協同組合が運営し、オープンして2年目を迎える「うべ新鮮市場 元気一番」を核とした加工品やメニュー開発等の取組を支援します。

なお、国際バルク戦略港湾として整備が進められている宇部港については、引き続き、国や県に対し事業の推進を要望します。

また、今後の石炭需要の増加を見据えるとともに、港の活性化を図るため、港湾計画の改訂についても、港湾管理者である山口県と協力して取り組んでいきます。

2 新しい人の流れをつくる

UIJターンなどで本市に移住する人、また、本市を訪れる人の流れを創り出し、定住人口や交流人口の増加を図るためには、本市の魅力や地域特性を効果的にPRし、産業構造を踏まえた戦略的な居住誘導や、ニーズに合った受入れ環境づくりを進めていく必要があります。

まず、「UIJターン・移住定住の促進」については、平成28年度中に策定する「宇部多世代共働交流まちづくり基本計画」に基づき、移住体験ツアーやお試し居住の実施、首都圏でのPRなどの取組を行うとともに、住宅家賃や資格取得等の支援により、看護や介護、保育等の専門人材の誘致に取り組みます。

更に、市内でも特に高齢化の進行が顕著である中山間地域においては、地域の取組と連携して、空き家の利活用による移住者等の受入れを進めるとともに、農地・営農指導付きの「宇部版クラインガルテン」を運営するなど、新たな地域の担い手の確保に繋げます。

次に、「大学等と連携した若者等の定着支援」については、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COCプラス事業)」に基づき、平成28年度に山口大学や宇部工業高等専門学校と連携して実施した、「テクノロジー×アート」の講座は、受講生が制作した光と音のアート作品を通じて、高齢者の認知症予防の研究に繋がるなど、当初の目的を超えて、多面的な広がりを見せています。平成29年度は、この講座を回数・内容ともに充実させ、単位取得可能な授業科目として展開します。

次に、「地域資源を生かした交流・シティセールスの推進」について、ときわ公園では、全国に誇れる植物館を目指し、ときわミュージアムの温室が「世界を旅する植物館」として、本年4月29日にリニューアルオープンします。

また、人材育成・地元定着促進を図る一環として、ときわ公園を実践フィールドにバージョンアップした「テクノロジー×アート」作品を制作して、2回目となる夏の夜のイベント「呼応する森」を開催するとともに、秋には「世界を旅する植物館」を会場に、特徴的な熱帯植物とデジタルアートとのコラボレーションによる新たなイベントを開催するなど、更なる拡充を図ります。

一方、本年5月には、国の指針に沿った安全管理体制のもと、本市のシンボルである白鳥の飼育再開を予定しており、高病原性鳥インフルエンザの感染リスクを最小限にするための飼育施設を整備します。

さて、平成29年度は、第27回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)本展を開催するビエンナーレ・イヤーです。アートは人の心を豊かにし、まちに賑わいをもたらすものであり、ばいじん公害を克服した宇部の原点でもあります。

このため、UBEビエンナーレを核として、まちなかアートフェスタ、うべの里アートフェスタ、そして宇部市芸術祭を連携させ、更に「うべの食」の魅力をプラスして発信する「第27回UBEビエンナーレ×まちじゅうアートフェスタ2017」を開催します。併せて、アーティストを招き滞在型の創作活動を実施するなど、市内全域で魅力的な「アートによるまちづくり」を進め、本市への「新しい人の流れ」をつくります。

また、冬の夜のイベントであるTOKIWAファンタジアが、10周年を迎えることから、産・官・学・民連携のイルミネーションコンテストに加え、新たに光と音楽を融合させたメディアアートを導入して、エンターテイメント性を高め、県内外からの誘客を強化するとともに、地域産業の育成にもつなげます。

これらの「うべの魅力」を国内に効果的に発信するために、首都圏や関西圏等でのシティセールス活動や、フィルムコミッションによるロケーション誘致活動等を積極的に展開して、本市の認知度の向上を図ります。また、市民へは本市の魅力を再認識する機会を創出することにより、シビックプライドの醸成につなげていきます。

一方、海外との交流については、これまで、スペインのカステジョン市と文化・スポーツ、学校間の交流を始めていたことをきっかけに、平成28年12月に、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおけるスペインのホストタウンとして本市が登録されたことから、今後本格的な交流を進めていきます。

3 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる

様々な子育て支援策に取り組み、若い世代が結婚や出産、或いは住まいの取得などの機会に、本市での定住を選択してもらえるよう、安心して子育てできる保育・教育環境を整え、暮らしやすい地域づくりを進めていきます。

まず、「結婚・出産・子育てへの切れ目ない支援」については、妊娠しても出産に至らない不育症治療費の助成制度を創設するほか、産後うつ予防のため、産婦健康診査を拡充します。

また、多世代ふれあいセンターに、遊びや交流ができる「こどもすくすくプラザ」を開設するとともに、子育て世代包括支援センター「Ubeハピ」や「こども家庭支援センター」を移設して、安心・安全な子どもの居場所づくりと、子育てに対する不安感や負担感の解消に向け、相談機能の強化を図ります。

次に、子育て環境の充実について、まず、待機児童対策としては、保育士の確保を図るため、資格を持ちながら勤務経験がない、又はブランクがある方に対するお試し雇用や、新たに保育士を目指す新卒者が市内に就労定着するための助成を行うほか、児童受け入れのために施設整備を行う私立保育園や企業主導型保育事業者等への支援を行います。

また、認可保育園等に入園できず、やむなく他の保育サービスを利用される方への利用助成クーポンを導入するとともに、公立保育園の定員拡大などにより、待機児童ゼロを目指します。

更に、ロタウイルスやおたふくかぜなど、任意の予防接種に対するこれまでの独自助成に加え、B型肝炎の定期接種年齢の対象外である小児への助成を行います。

次に、「魅力ある優れた教育機会の提供」については、子どもの学びと育ちを保障する教育の推進のため、「子どもの学力の向上」と「コミュニティ・スクールなど地域とともにある学校づくりの更なる推進」を重要課題と捉え、新たな施策に取り組みます。

まず、学校教育の充実としては、平成32年度から実施される次期学習指導要領に対応する教育を行います。具体的には、「学びの創造推進事業」について、教職員への研修等を充実させることにより、次期学習指導要領に今後の指導方法として示される「主体的、対話的で深い学び」、いわゆる「アクティブ・ラーニング」への理解を深めるとともに、更なる授業の改善を図ります。

また、児童生徒の学ぶ意欲を高めるため、読書活動の推進や英語教育、ICT教育など、時代のニーズに応じた多様な取組を実施します。

特に、読書活動の推進については、学校図書館等支援員の増員や学校図書館へのエアコン設置など、環境整備を進めるとともに、より専門性の高い学校図書館専門員を配置し、学校での読書環境の充実を通して、読書が好きな子どもを増やしていきます。

また、英語教育については、小中学校ともにオンライン英会話の拡充や、外国語指導助手の増員により、児童生徒の「聞くこと」、「話すこと」の能力の向上を図ります。

なお、市内全中学校区での小中一貫教育実施に向けて、モデル校を2中学校区に設置し、本市における小中一貫教育の方向性を検討していきます。

学校施設の耐震化については、平成28年度からの継続事業による岬小学校校舎や厚南中学校体育館など、校舎1棟、体育館6棟の計7棟の改築工事を実施します。これにより、平成29年度末には、小中学校施設の耐震化率は91.0パーセントになる見込みです。

なお、見初小学校と神原小学校の統合については、引き続き、関係校区民と統合に係る具体的な事項の協議を進めます。

次に、地域と連携した教育と教育環境の充実については、これまで以上に、コミュニティ・スクールやうべ協育ネットの取組を活発に行い、学校や家庭、地域が連携・協働した、「地域ぐるみで子どもたちを守り育てる仕組みづくり」を推進するとともに、学校を核とした地域づくりに貢献していきます。

また、平成29年度からは、専門家の指導による競技力・技術力の向上を図るとともに、教員が授業等の教育指導に専念できる環境を確保するため、新たに、中学校に部活動指導員の派遣を行います。

次に、いじめや不登校の問題については、いじめや不登校に悩む児童生徒をなくすため、引き続き、未然防止や早期発見、早期対応に取り組みます。特に、不登校対策については、平成29年2月に策定した「宇部市不登校防止アクションプラン」に基づき、教職員への研修等の実施、フリースクール等の関係機関との連携などにより、不登校の防止・早期対応に取り組みます。

発達障害など特別な配慮が必要な子どもたちへの支援としては、発達障害等相談センター「そらいろ」との連携を図りながら、インクルーシブ教育システムの構築を推進し、就学前から卒業後に渡る切れ目のない支援に取り組みます。併せて、小中学校へのサポート教員等の配置や発達障害児等支援ボランティアの活躍を推進することにより、子ども自身や保護者への支援体制の充実を図ります。

また、市立図書館及び学びの森くすのきでは、開館時間を1時間延長するとともに、開館日を拡大し、利用者の更なる利便性向上を図ります。

4 地域資源を活用した多様な地域社会の形成を目指す

「しごと」と「ひと」の好循環を支えるためには、「まち」の活力を高め、市民が安心して暮らすことができる社会環境を創り出していくことが必要です。

まず、高齢者への支援策として、市内10か所に設置している高齢者総合相談センターを核に、地域と医療機関・介護施設の連携のもと、地域支え合い包括ケアシステムを強化して、住み慣れた地域で安心して生活できる地域社会の構築を進めます。併せて、地域支え合い活動の促進を図り、多世代・多機関が支え合い、子どもから高齢者、障害者までを包括する仕組みづくりを進めます。

次に、健康長寿のまちづくりとして、市民の誰もが安心して心豊かに暮らせる「健幸長寿のまち宇部」の実現を目指して、平成28年度中に策定する「第三次宇部市健康づくり計画」に基づき、「まちなか保健室」の開設や減塩促進による生活習慣病の予防等に取り組みます。

また、がん対策として、早期発見、早期治療に有効ながん検診を促進するため、啓発キャンペーンの実施や、子宮頸がん及び乳がんの検診無料クーポン券の配付対象を拡大するほか、がん患者の就労や社会参加を支援するため、ウィッグの購入費用の助成制度を創設します。

障害者の地域活動への支援としては、公共施設のバリアフリー化を進めるとともに、障害者理解の促進やコミュニケーションの支援のための「宇部市障害のある人へのコミュニケーション支援条例」を制定し、障害者差別の解消と合理的配慮の推進を総合的に図ります。

また、障害者の地域生活を支える体制の充実を図るとともに、働きたいと希望する障害者の就労を支援し、安心して暮らせる地域づくりを推進します。

次に、「地域課題を自ら解決できる元気コミュニティ・小さな拠点づくり」については、まず、元気・安心・地域づくりの推進として、市内全校区において地域が主体となって策定してきた「地域計画」の実施に対して、地域・保健福祉支援チームを中心に関係機関等とも連携を図りながら、地域運営組織の設置や地域の自立につながる先駆的な取組への支援を行います。

また、日常生活の移動手段を確保していくため、路線バスを運行していない地域や、今後、バス路線の見直しが行われる地域等において、地域住民や事業者と連携を図り、コミュニティ・タクシーなど、地域内交通の導入や運営について、市が主導して取り組みます。

また、空き家の適正管理については、平成28年11月に策定した「宇部市空家等対策計画」に基づき、適切な指導等を行うとともに、空き家の有効活用を促進し、空き家の発生未然防止に取り組みます。

次に、中山間地域づくりの支援としては、中山間地域・保健福祉支援チームや地域おこし協力隊員を中心に、地域における健康づくりやコミュニティビジネスによる経済循環の仕組みづくりなどを進め、地域活力の創出に引き続き取り組んでいきます。

スポーツによる元気な人づくりとしては、宇部市スポーツコミッションと連携して、スポーツによる健康づくりを目的とした住民総参加型イベント「チャレンジデー」に今年も参加するほか、毎月最終水曜日に「マンスリーチャレンジデー」を実施し、市民と一体となったスポーツ・健康づくりの意識の向上を図ります。

更に、誰もが住み慣れた地域で継続してスポーツに親しめるよう、地域の施設・人材・組織の活用を図るとともに、ときわ公園サッカー場の人工芝生化や俵田翁記念体育館の耐震改修に着手するなど、スポーツ環境を整備し、スポーツを通じた健康の増進と地域の活性化に取り組みます。

5 「にぎわいエコまち計画」に基づく都市基盤の整備

「宇部市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げた4つの基本目標を達成するためには、今後の人口減少・少子高齢社会を見据えた最適な都市基盤を整備することが必要です。

このため、「宇部市にぎわいエコまち計画(低炭素まちづくり計画)」に基づく、「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の実現に向けて、「立地適正化計画」の策定に引き続き取り組みます。

併せて、平成28年度中に策定する「宇部市地域公共交通再編実施計画」により、市民の利便性を高める公共交通網の再編を推進します。

また、本庁舎の建設と周辺の再整備を目指す「市役所周辺地区」では、新庁舎建設に向け基本設計を進め、宇部新川駅周辺の再開発を目指す「宇部新川駅周辺地区」では、駅前広場周辺の権利者等との合意形成に向けたコーディネート業務を実施します。新たなにぎわいの創出を目指す「中央町三丁目地区」では、宇部多世代共働交流まちづくりの拠点地域の一つとして、看護・介護・保育人材の移住推進用共同住宅の建設や建物リノベーションへの支援を行うとともに、多世代交流スペースでは、新たな取組として、若者を始め多世代・異業種の交流・連携を目的とする「若者クリエイティブコンテナ」を開設し、起業創業向けのセミナー等の開催や地域の価値を高めるアーバンデザインセンターとしての活動に対して支援を行います。

また、シンボルロードをはじめとした中心市街地において、快適でうるおいが感じられるまちづくりの実現のため、新たに「まちなか緑と花の回廊づくり」に取り組みます。

更に、宇部商工会議所と連携して、中央町地区のエリアマネジメントや中心市街地のにぎわい創出事業等を行うまちづくり会社「株式会社 にぎわい宇部」を支援します。

6 効率的な行政運営の推進

社会経済情勢の変化や新たな行政課題に迅速かつ的確に対応するために、多様な主体と連携を図り、広域的な視点で持続可能な行政サービスの提供体制を整えるなど、事業効果の最大化に一層努めていく必要があります。

「第二次行財政改革加速化プラン基本計画」の最終年である平成29年度は、より柔軟な視点と発想、働き方改革を推進し、積極的な事務事業の見直しを行うとともに、新たなプランの策定に取り組んでいきます。

更に、多様な財源確保の手法として、企業版ふるさと納税を導入します。

また、「宇部市公共施設等総合管理計画」に基づき、ふれあいセンターや保育園、青少年会館、福祉会館の耐震診断を行い、耐震化を含めた施設の長寿命化など、将来を見据えた施設マネジメントを実施していきます。

更に、山口市をはじめ6自治体との連携のもと、「山口県央連携都市圏域」の形成によって広域行政を推進し、強みを高め、弱みを補完する取組を進め、連携中枢都市として圏域の経済成長を牽引していきたいと考えています。

市民サービスの向上については、福祉相談窓口をワンストップの総合相談窓口として利便性を高めるとともに、マイナンバーカードを活用して住民票の写し等が取得できる「コンビニ交付サービス」の更なる普及を目指します。

市民との情報共有については、ホームページをはじめとした各種広報媒体と情報内容をより充実させ、市政への関心や参画意識を高めるための創意工夫に努めるとともに、引き続き「うべの情報知っちょる会」や「ふるさと元気懇談会」、「インターネット市民モニター制度」などを活用し、市民の意見・提案を市政に反映します。

7 公営企業

人口減少や社会情勢の変化に伴い、公営企業の経営環境は今後、更に厳しさを増していくものと予測されます。

各料金収入の減少傾向が今後も続く中で、安定的に事業を継続していくためには、より一層の経営努力が必要であり、抜本的な経営改革を進め、市民サービスの維持・向上を図ります。

まず、上下水道事業については、市民生活に欠くことのできないライフラインの機能を維持するため、引き続き老朽化した施設の更新と耐震化に取り組みます。

水道事業については、山陽小野田市との水道事業広域化について引き続き協議を進め、広域化実施計画を策定します。

また、下水道事業については、老朽化した栄川ポンプ場や鵜の島ポンプ場の機能を統合した玉川ポンプ場の整備を進めるとともに、東部浄化センターと西部浄化センターの改築更新など、機能の継続に取り組みます。

次に、交通事業については、安心・安全な運行と、バスロケーションシステムの導入などによる利便性の向上に努め、利用促進を図るとともに、市民の元気で安心な暮らしを支え、「使いやすく、持続可能な地域公共交通網」を形成するため、「宇部市地域公共交通再編実施計画」に基づき、バス路線の総合的・抜本的な再編を進めていきます。

おわりに

以上、申し上げました事業をはじめとする諸施策の執行に当たりましては、職員一人ひとりが、市政発展への使命感を持ち、まちづくりの主役である市民とともに、スピード感を持って地方創生に積極的に取り組んでいきます。

平成29年は、私にとりまして2期目の任期を終える節目の年です。

本市を取り巻く社会・経済情勢は決して予断を許さない厳しい環境ではありますが、「宇部の精神(こころ)」である「共存同栄・協同一致」を原動力に、先人たちが築き上げた「ふるさと宇部」を、人口減少社会に負けない、将来にわたって輝き続ける宇部市とするため、総合計画の求める都市像である「みんなで築く活力と交流による元気都市」の実現に向けて、全身全霊を込めて取り組んでいきたいと思います。

市議会議員各位をはじめ、市民の皆様におかれましては、これまで申し述べました平成29年度の施策提案と当初予算案に対しまして、深い御理解と御賛同を賜りますよう、心からお願い申し上げまして、平成29年度の施政方針といたします。

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  • 市の総合的な政策の企画立案・調整及び進行管理、重要な分野別の計画及び施策の調整に関すること
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