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更新日:2018年8月3日

近代建築屈指の名作

改修工事の経緯

昭和12年の竣工後、記念会館は二度の改修工事を行いました。昭和33年には舞台裏に機械室を増築し、空調設備を完備しました。屋上に鉄骨を組み、銅板で覆った屋根の間にダクトを配したほか、客席両側に側廊を設置しました。側廊は最初の設計図面にはありましたが、事情により外されていたもので、周囲の音が直にホールに入る欠陥の補正と、来場者の利便性を確保するため、新設しました。昭和50年には、舞台間口・袖を広げ、あわせて舞台音響・照明・吊物設備、空調設備、客席椅子等を更新しています。

二度の改修工事にかかわらず、築後50年が経つと、建物全体の痛みが進み、抜本的な改修工事が急務となりました。本市は、近代建築における記念会館の歴史的価値と文化遺産の役割を考慮し、大改修工事に踏み出すことにしました。平成3年度に実施した事前の強度調査では、コンクリート等の状況が「予期以上に健全であった」と報告されています。

村野は、当時の現場を振り返って、渡辺翁の記念会館ということで、無償で提供をうけた建築資材も多かったのでは、と語っています。実質の改修工事は、平成4年10月から平成6年3月にかけて行われました。記念公園の整備を含めた総工費は約22億円です。

記念会館のリニューアルに際し、課題になったのは壁面タイルの張替えです。というのは、外観のタイルは、色調において高い評価を得ていたからです。時間の推移とともに紫系統に変化するこのタイルは、塩焼きタイル(焼くときに塩水を利用する)と呼ばれ、現在は公害問題から製造中止になっています。同タイルは製作できないため、極力塩焼きの色合いに近づくよう数回の試験焼きを繰り返し、結果として還元焼成タイルを採用しました。正面の約2万枚のタイルはすべて張替え、使用可能な約3千枚は建物の側面部や後部に回しています。壁面の突起部分は、改修前にすべて写真に収め、同じ箇所に再現しました。

建築主体の今回の改修工事は、構造の根幹的な部分には手を加えていません。ただ2階の客席については、椅子の前後の間隔を広げるため、段床部分を再構築しました。2階は、支柱なしで後部壁面から約10メートルほど突き出ており、鉄筋の状態を確認しながら、細心の注意で段床の改造工事が進められた結果、2階の客席数は596席から516席に減少しました。座席は、新たにデザインされた藤色の椅子に取り替えられました。

舞台音響は、最新の音響調整卓の導入、アンプ・スピーカーの機能向上、マイク回線等の充実を行い、舞台照明は、記憶可能な調光操作卓の導入、昇降装置付のシーリングライトの採用等で一層の利便性を図っています。1、2階のロビーについては、照明不足と器具の老朽化による止むを得ない措置で、照明器具のデザインを新しくしています。階段等の他の照明器具は、同じデザインで復元したものです。

なお、会館の北側奥に倉庫を兼ねたリハーサル棟を増築しました。

近代建築史上、屈指の名作

宇部市渡辺翁記念会館は、本市の文化遺産にとどまらず、近代建築の記念碑的存在です。建築関係者等の揺るぎない評価を背景に、平成7年5月、BELCA賞(ロングライフ・ビルディング部門)受賞、平成11年8月、(社)日本建築学会選定の「日本におけるモダン・ムーブメント20選」に選ばれました。さらに、平成9年6月、国の登録有形文化財に登録ののち、平成17年12月には国の重要文化財に指定され、また、平成19年11月には、「地域活性化に役立つ近代化産業遺産」 にも認定されました。

最後に、藤森照信(東京大教授・建築史)が、記念会館全景について述べた文章を紹介します。『やさしさと力強さ、親近感と記念碑性、こうした相反する性格をこれほどみごとに一致させた建物はほかにはない。村野藤吾の数多い名作のなかでも名作中の名作といってよい。』

ベルカ賞

昭和51年と平成5年に大改修が行われましたが、長年にわたる適切な維持保全が評価され、平成7年に、社団法人建築設備維持保全推進協会(BELCA)から、BELCA賞(ロングライフ・ビルディング部門)を受賞しました。

モダン・ムーブメント20選

平成11年8月には、国際組織ドコモモ(DOCOMOMO)の依頼を受けた社団法人日本建築学会により、「線や面を組み合わせた美学の適用」、当時の多くの建築物の中で、音楽ホールを代表する建物」等の理由で、『国内のモダン・ムーブメントを象徴する現存例20件』の1つに選定されました。(県内では1例)

モダンムーブメントは、20世紀の建築の主要な潮流の一つで、18、19世紀に端を発する合理的・社会改革的な思想や技術革新をベースに、1920~30年代に西ヨーロッパで明確な形を取り、線や面の構成による美学に基づいて、1940年代から世界中で造られ始めた建築です。

国指定重要文化財

昭和初期の近代建築屈指の名作と評価され、「造形の模範となっているもの」という理由で、平成9年6月、国の登録記念物に登録されていましたが、平成17年12月、意匠的に優秀であり歴史的価値の高いものとして、重要文化財の指定を受け、同時に、登録記念物の登録は解除されました。 指定にかかる骨子としては、郷土に大きく貢献した実業家渡辺祐策翁の遺徳を顕彰し、郷土史において象徴的な意味を持つ建築物である点、設計において、昭和を代表する建築家村野藤吾氏の戦前における集大成作品で、日本近代建築の一つの到達点を示す作品である点、音楽ホールとして卓越した音響効果を有する点の3点です。

地域活性化に役立つ近代化産業遺産

平成19年11月、経済産業省がとりまとめた「近代化産業遺産群33」の一つである、「産炭地域の特性に応じた近代技術の導入など九州・山口の石炭産業発展の歩みを物語る近代化産業遺産群」の構成遺産の一つに認定されました。

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